No.180:を育てるのが上手い会社と下手な会社の差は何か!マニュアル・・訓練制度・・ズバリこれ

コラム№180

「矢田先生、ずいぶん影響を受けてしまいました。」
 
設備サービスを提供するF社長、経営計画書づくりに取り組んでいます。
当社はサンプルとして他社の実際に運用している経営計画書を提供しています。
 
拝見すると、確かに、F社長らしからぬ調子の文章になっています。
 
F社長続けられます。
 
「そのお陰で、文章の恐ろしさを、身をもって知ることができました。」
 
( 一同笑 )


決められたことをその通り出来るようにするのが「訓練」です。それに対し、目的や状況を考え、応用できるようにするのが「教育」となります。
 
スタッフを雇うと、まずは「訓練」が必要となります。
受け持ちの業務が、決められた手順で、正確にできるようにする。
マニュアル通り、接客やサービスが提供できるようになる。
 
まずは、限定された作業を与えます。そして、それを型として身に付けてもらいます。それにより何かしらの成果を早く出せるようになります。
 
その業務を、「習慣」として十分こなせるようになると、応用という段階に移ることができます。
お客様ごとのイレギュラー対応を受け持つ。
専門知識とともに、企画力が必要な営業業務に移る。
予知予見が必要な工程表を作成する。
業務の効率化とそのマニュアル作成を行う。
 
これらの業務には、目的や状況から判断するという力が必要になります。この力を発揮できるのも、基盤となる「型」がしっかり出来ているからこそです。
 
会社として、訓練により型を効率よく覚えさせ、そして、早く応用できるようにする、という仕組みが必要になります。
これにより採用したスタッフを短期で戦力化することができます。
また、それにより早い事業展開が可能になります。
 
 
この訓練期間にテキストとして必要となるものが、マニュアルとなります。
 
マニュアルは、多くの経験の中で得た自社のノウハウの集大成です。そのマニュアルには、作業手順と合わせて「考え方」も記載します。
どういう目的でやるのか、全体の工程の中での重要性など。
 
マニュアルは、必ず「目的」+「作業手順」で構成されます。
その作業手順の目的すなわち意味を知ることで、そのスタッフは、今後自分で行う判断や思考をすすめる上での糧を得ることができます。
 
残念ながら、世の中には、作業手順しか記載されていないものが多くあります。
それは「作業手順書」ではあるものの、「マニュアル」と呼ぶには不十分と言えます。
 
今も昔も、顧客からのクレームの上位を占めるものに「マニュアル的な対応」が上げられます。これは、目的や状況を考えずに、手順のみを「正しく」行うところに発生する現象です。
 
この現象を避けるため、そして、今後のためにも、訓練を行う際には「考え方」をしっかり伝える必要があります。目的や意味をしっかり頭においた状態でその作業を行わせるのです。
 
それにより、習得スピードは、格段に速くなります。その納得感は、勤労意欲にもつながります。また、今後自分でそのやり方を見直し、工夫をすることができるようになります。
 
このスタッフの頭に置く「考え方」を、正しく表現すると下記になります。
「その作業のやり方が、結果に対しどのような影響を与えるのか」となります。
 
気持ちの良い挨拶をすると、お客様はニコリと微笑んでくれた。
上手に商談を組み立てられると、お客様から注文書と感謝まで頂けた。
帳票に決められた通りの内容を記入すると、後工程がスムーズに流れた。
 
自分が担う作業が、どう人や他部門に影響を与えるのかを、頭に置きながらその手順を行わせることが重要になります。そして、それにより、そのスタッフは、自分自身での検証が可能となります。
 
挨拶を怠ける時には、やはりお客様の態度は冷たくなった。帳票への記入をいい加減にし、後工程から叱られた。
 
この自らの検証を繰り返すことで、その作業の考え方を本当に理解し、応用が可能となります。
そして、そこに「喜び」が生まれます。自分の存在意義、自分のチームへの貢献を感じることができます。
この延長に会社の理念や行動指針があります。マニュアルの正しい運用こそが、現場と理念をつなげる役目を果たすのです。
 
作業手順は教えるものの、その目的や意味という「考え方」の提供をしないのであれば、スピードを持った習得も自主的な工夫もあり得ません。ましてや、勤労意欲も喜びも得ることはできないのです。
 
 
そして、訓練後、すなわち、何かをやらせた後には、「振り返り」が必要になります。「その作業をやって、狙い通りの結果を得ることができたか」を自分で言ってもらいます。
 
自分で口に出すことで、初めて、事前に描いていた結果(目的)が達成できているかを正しく認識することができるのです。それにより、目的がより腹に落ちてきます。また、応用力が付きます。
 
効率の高い訓練が可能となります。
訓練では、作業手順とともに目的を教え、やらせてみる。そして、その結果を本人の口から言わせる。訓練とは、この体系なのです。
 
 
人を育てるのが上手い会社とそうでない会社の差はここにあります。
「目的を伝えているか」、「本人に言わせているか」
 
上手い会社も下手な会社も、その訓練の仕組みは、一見は同じです。
しかし、そこには全く異なった考え方があります。
 
正しい考え方を持って仕組みを作っていくことが必要です。


私たちの会社は、「情報」で溢れています。
その情報には、「目に見える情報」と「目には見えない情報」があります。
 
訓練で教えるのは、「目で見える情報」だと言えます。
挨拶の仕方、作業のやり方、書類の作り方。
これらが、まずは、目で見て、その通り出来ているという状態を目指すこと、これが訓練です。
 
それに対し、教育では、「目には見えない情報」を身に付けさせることになります。
その作業の目的や意味、全体の工程の中の重要性、など。
 
人材育成という世界には、「見て盗め」や「本人が気づくのを待つ」という考え方があります。しかし、それでは、目で見える部分は知ることができても、目には見えない、すなわち本当に重要な部分を知ることはできません。また、それでは時間がかかりすぎるのです。
 
 
会社には、「目には見えない情報」で溢れています。
 
何を事業の柱とするのか、誰をメインのターゲットとするのかという事業戦略、営業エリア、重点商品、在庫するもの、社員の採用というすべてにある方針、今期何を達成するのか、そして、その行動計画、各部門や役職者には何を担ってほしいのか。
 
また、会社の歴史もあります。
沿革には、「創業」、「本社移転」、「〇〇商品100万個達成」という文字があります。どの時代にも人が居り、人間的な想いや葛藤があったはずです。
 
そこには、目には見えないが、確実に何かが存在しているのです。
 
 
会社における事実情報すなわち「目で見える情報」とは、ごく僅かしかありません。
それは、登記にのっているものだけです、住所、資本金、代表者、事業。
その要素だけで、会社ができているわけではありません。
 
会社というのは、ある「考え方」の集合体なのです。
我が社は、どういう考え方で事業をやっていくのか、今後どうしていくのか、
その共有しか会社の実像はないのです。
 
目には見えないが、重要なものがあります。
会社のそれを、固める必要があります。
そして、これから入ってくる人にも、それを伝え、共有する必要があります。
 
理念、経営計画書、方針書、マニュアル、訓練、評価制度会議や朝礼、会社におけるすべての取組みが、その共有を深めるための仕掛けになります。それにより各スタッフ各部門が、この先も適切な判断と工夫を進めることができます。
 
 
冒頭のF社長は、他社の経営計画書を観て大きな影響を受けました。
経営計画書は、本来なら自分の言葉や表現で作らなければならないとは解っています。
それでも、その影響を避けることはできませんでした。
 
そのサンプルにも、その経営者なりの人生があり、強烈な想いが宿っています。
人は、そんな文章を読めば、影響を受けないはずはないのです。
そして、自分の体温が上がるのも感じます。
 
F社長は、そんな唯の文章が人に大きな影響を与えてしまう、ということを、身をもって体験しました。だから、「恐ろしい」と言葉にされたのです。
 
 
社長にとって、文字は想いです。
そして、道具です。
 
社長の想いを文字という目で見える形にして伝えるのです。
それにより、社員は、初めて社長の考えを知ることができます。
そして、各々が、その日々の実務のなかで検証をしていきます。
 
その日々の積み重ねで、その社長の想いは、いつしか組織としての想いとなります。

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