No.189:機能しない管理者に痺れを切らす!管理者を入れ替える「決断」をするために必要な社長の哲学とは!?

コラム№189

「矢田先生、管理者である彼を、かえることを考えた方が良いのでしょうか?」
 
事務所に相談に来られたM社長の言葉です。
優秀と見込んだ社員を管理者に抜擢し、1年が経過しています。
しかし、当初期待したほどの成果が出ていません。
その状況にM社長は少し焦っています。
 
私は、確認をさせていただきました。
「彼をかえるとは、「変える」ことを意味していますか?それとも、「替える」ことですか?」


多く寄せられる相談の一つに「管理者が機能しない。」というものがあります。
・依頼した仕事が進んでいない、進捗の報告もなければ、相談もない。
・自部門の業務の改善を自発的に行わない。
・部下の仕事が遅れていてもほったらかし。粗悪な態度も注意しない。
 
そして、その相談内容は次のように続きます。
「どうやったら管理者に、やる気をもって仕事に取り組んでもらえるでしょうか?」
そして、
「それとも、その管理者を見切って、入れ替えた方が早いのでしょうか?」
 
それに対し、私は、質問を戻すことになります。
「管理者が機能できるだけの仕組みがありますか?」
 
 
管理者が機能するためには、次の三つの前提が必要になります。
「案件が見えるようになっていること」、「業務の基準があること」、そして、「自分(管理者)の役目が理解できていること」。
この三つが揃って初めて、その人は、管理者としての業務を担うことができます。
 
各部下が抱えている案件が今どのような状態なのかが見えない、自社のサービスの標準や品質や納期の基準がない、自分が何を期待されているのか、そもそも管理者は何をするのかを解っていない状態では、管理者の仕事を全うしたくても出来ません。
 
また、大手企業とは違い、中小企業では、参考にできるような管理者が社内にいません。自分の上は「社長」だけです。「社長」は社長なだけに、参考には成り得ないのです。
 
その結果、多くの会社では、管理者が機能していません。
根本的に、「管理者を動かす仕組み」が無いのです。
現場のスタッフを動かすのが仕組みであるのと同様に、管理者を動かすのも仕組みです。
仕組みという支えが有って初めて、管理者は管理者として機能ができます。そして、その行動と成果を観て初めて、その管理者を評価することができます。
その管理者自身は、その評価のフィードバックも、人事も、受け入れることができます。
 
多くの会社では、「管理者の人事(人選、処遇、降格)」について議論するスタート地点にさえ立てていないのです。
仕組みが有って初めて、「その管理者の仕事具合」が見えるようになります。そして、「その管理者が適任かどうか」について検討することができます。
その整備ができた時にもう一度、「あの管理者は、管理者としての能力があるのだろうか?」という問いができるようになります。
 
絶対に「人」に向かってはいけません。
「彼に、やる気を出してもらうためにはどうしたらいいだろうか?」
「外部の研修に行かせれば、何か気づきを得て変わってくれるだろうか?」
このように「人」に向かった瞬間、『思考停止』の状態に陥ることになります。
現場のスタッフ、社員、管理者、断じて彼らの問題ではないのです。
経営者は、断固として「人」に向かいたい気持ちを抑えなければなりません。「人」に向うという思考の癖を直さなければいけないのです。
「今回のお客様からのクレームは、業務の流れが悪いのか?引継ぎの書類を見直す必要があるのか?」
「新人の育ちが遅いようだ。これは、訓練プログラムの問題か?それとも、トレーナー制度の問題か?」
「人を変えよう」とは考えてはいけないのです。


『人を変える』ためのアプローチは、大きく二つあります。
 
一つは「意識を変えて、行動を変える」というアプローチです。
研修に行かせる、ディスカッションをする、本を読ませる、講演をきかせる、という方法が代表的なものとなります。気づきを得た結果、自分の態度を改める、という流れです。
 
もう一つのアプローチが、「行動を変えて、意識を変える」というものです。
まずは決まった形を教え、習慣として身に付けさせることをします。その動作を繰り返すうちに心が整っていきます。「躾」という考え方です。
 
我々は、この後者のアプローチを選ぶ必要があります。
仕組みによって人の行動をコントロールします。新しく採用した人に対しては、まずは決まったことを、その通り出来るようにします。
礼儀正しい挨拶、整理整頓の癖付け、、、それらによって心が整ってくるのです。
 
そして、それを全員でしっかり繰り返すことによって、職場の雰囲気は緊張感のあるものになってきます。そして、新しい人はその雰囲気に当たり前のように染まって行くことになります。
 
そして、その時に重要となるのが、説明です。
その態度の重要性や手順の目的を説明することが必要になります。
私たち人間が強く持つ欲求の一つに、「納得性を求める」と言うものがあります。
「なぜこれをやるのだろうか?」、「どういう経緯があったのか?」
何かを教わる時には、そのやり方だけではなく、その「なぜ」を知りたいのです。納得がほしいのです。その説明によって、その動作の定着は早くなります。
 
特に 優秀な人は、「なぜ」を重視します。頻繁に「なぜ」を頭の中で生み出しています。そんな人は小さな時からそれを行っています。
「どうしてオリンピックという呼び名なのか?」、「どうしてあのマークなのだろう?」そんな疑問を持って生きてきました。大人になってもそれを続けています。
「もっといいやり方はないだろうか?」、「どうやったらもっと効率良く出来るのだろうか?」全てに対して、「なぜ」を持ってしまうのです。
 
優秀な人とそうでない人の差は、日々頭の中で「なぜ」を生み出す回数と質の違いであると言えます。その答えを求め、自ら本を読みます、そして気づきを得て自分の行動を変えていきます。これができるのは優秀だからこそです。
 
優秀な人は自分で自分を変えていきます。
この優秀な人が欲しいのです。
 
 
仕組みは、「並みの人」に「偉大な成果」を出させるためにあります。
仕組みは、「いまいちな人」に「決まった成果」を出させるためにあります。
その仕組みを、この優秀な人と一緒に作っていきます。
 
その仕組みをつくる役目の人のことを「管理者」といいます。
主な「管理者」の仕事は、「仕組みを改善すること」です。
「仕組みを改善するため」には「なぜ」の欲求が必要になります。いま現在自社には無いものを、学び、考え、変えることこそが、仕事なのです。
その「なぜ」の能力があり、自分の行動を変えることが出来るからこそ、自分の環境すなわち仕組みを変えることができるのです。
 
管理者でも大きく二つの人種を使い分けることになります。
「決まったことをしっかりやってほしい」という期待で任命する管理者と、「仕組みを改善してほしい」という期待で任命する管理者と、です。当然、後者の「駒」は限られています。その「駒」を本当に重要なポジションにつけることになります。
 
この人選を間違えた時に、人を「替える」ことを検討することになります。
前者の「決まったことをしっかりできる人」を「仕組みの改善をしてほしい」という役目に任命してしまったのです。また、どちらも無い人を任命してしまったのです。その管理者には、それだけの能力はなかったのです。
その能力は、仕組みができると明らかになります。
 
冒頭のM社では、その仕組みづくりに着手しました。
1年後には、懸案事項であった彼は、管理者としての「機能」を発揮するようになりました。
社長が、当初見込んだだけの能力は、やはりあったのです。
M社長は言われます。「過去に何人も管理者に任命してきました。そして、全員が最終的に会社を去っていきました。管理者を機能させる仕組みが無かったのですね。彼らには申し訳ないことをしました。」
 
部門に与えた目標が進まない原因は、大きくは二つしか有りません。
一つは「管理者を機能させる仕組みが無い」ということ。
または、「その管理者の能力がない」ということ。「なぜ」を持たない人を任命してしまったのです。
 
仕組みがすでに有りながら、その人に管理者としての能力がないと判断できた時には、「人を替えなければいけません」。
選んではいけない人を選んだということを素直に反省し、人事の決定を下すのです。
多くの場合、人を替えることで、その部門や業務は進むことができます。
この段階では、「人を替える」ことに躊躇してはいけません。「人を変える」ことに思考を戻すことは、もってのほかです。
社長としての速やかな『判断』が必要になります。
 
年商数億企業は、仕組みを作らず、「人」に向かいます。その「人」も納得性はありません。そして、その結果、答えを先延ばしにします。
年商10億企業は、人に向かわず、「仕組み」に向かいます。その「人」にも納得性があります。そして、速やかに答えが見えるようになります。
仕組みがあるおかげで、見えるようになります。基準にあわせ評価ができるようになります。そして、判断ができるようになります。それは、決断ではないのです。
 
人を変えるための仕組み。
その仕組みを変えるために、人を替える。
 
「なぜ管理者が機能しないのか?」、その「なぜ」に社長は向き合わなければなりません。

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