No.208:事業モデル変革の4つのパターン:当社が今期関わった40社を分析して解ったこと

コラム№208

 
なぜこのような会社が、大きくなれるのか?
 
この日の会議も予定終了時間を大幅に過ぎています。
会議前半は、社長の演説が続きました。発言を求められた管理者は、その場をやり過ごそうと沢山の言葉を発します。各議題について、何が決まったかもよく解りません。
社長を含め誰一人、期首に配布された経営計画書を持ってきていません。何一つ方針書も存在しません。
 
その会議で配布された資料の中に、今期の着地予測があります。
40億、昨年より2億円増えています。
 
再度、疑問が頭をよぎりました。
「なぜこのような会社が、大きくなれるのか?」


今期、当社が年商10億事業構築コンサルティングで関わらせていただいた会社は40社あります。
内、年商10億になる事業モデルの変革を確認できた(条件を揃えられた)会社は31社となります。残りの9社は、現在変革に取り組んでいる会社です。
 
事業モデルの変革には、パターンがあります。
その31社を、「商品」と「ターゲット」という2つの軸で、4つのグループに分けました。また、それぞれの全体に対する割合は次の通りです。
 
A:商品・ターゲット、共に同じ。 18社 58%
B:商品は同じ。ターゲットを変更。 4社 13%
C:商品を再構築。ターゲットは同じ。 2社 6%
D:商品を再構築。ターゲットも変更。 7社 23%
 
それぞれを見ていきます。
Aグループは、年商10億への事業モデルの変革のために、商品もターゲットも大きな変更をしていません。それでも、年商10億へ向けて再度の成長を歩み出しています。
再度、自社の事業の棚卸を行うと、自社の事業モデルが素晴らしいことに気づけました。そのため再定義を行い、提案書の整備やマーケティングフローの見直しを行いました。
 
驚くことに、このAグループが、31社中18社と、全体の58%を占めます。
多くの会社が、自社の本当の良さに気づけていなのです。自社の特色に気づけていません。
「お客様は、なぜ当社と取引をしてくれているのか」、その理由が解っていなかったのです。
このグループは、数か月後には売上げが伸びてくるのが通常です。
 
Bのグループは、提供する商品(サービス)はそのままで、提供する先を変えることで変革をしました。
今までのお客様にとっては、その会社の商品は、特別なものではありませんでした。そのため、価格で比較されます。
しかし、同じ商品でも、まだその存在が「特別」である業界やグループがあります。その業界やグループに持っていくと、非常に喜んでくれます。
新たなターゲットへの見せ方とアプローチの仕方を開発します。
すでに商品に関する経験値は豊富に持つため、半年ほどで売上げは伸びてきます。
 
Cのグループは、新たな商品を創ることで、既存のお客様へ強いアプローチができるようになります。
すでにお客様との繋がりはあります。業界の課題や競合の状態などを探ることは容易にできます。お客様に訊けば、多くのヒントも教えてもらえます。
商品のアイディアを提案書にまとめ、まずは繋がりのある顧客や商社などに見せ、フィードバックをもらいます。立ち上げ前に、精度の高いブラッシュアップが可能です。
このグループは、お客様との繋がりがすでにあるため、見つけられた後には、すごいスピードで業績を伸ばすことができます。
 
Dのグループは、やはり苦労することになります。
既存のお客様を相手に、今の商品のままでは、大きくなることが無理と判断ができます。お客様がそれに支払う金額は小さく、こちらも手間に見合っていません。
商品を新たに作り直し、新たなお客様を探さなければなりません。
アイディアが浮かんだとしても、何が正解か解りません。そのため、提案書の作成やフェアに出展し、探ることを続けます。非常に時間がかかります。
だからこそ、大きくなるビジネスの条件を抑え、その構築のための的を絞った検討と動きが必要になります。間違っても大きな投資をしてはいけません。
このグループは、社長自身がまだ売上げの多くを稼いでいるケースが多く、その時間の捻出も非常に大変です。
 
一つの事業モデルが完成するまでに1年~2年はかかります。
ただし、その後もっとも大きく成長するグループでもあります。その条件を最初から満たしてスタートしているからこそ、数年で10億突破という企業もあります。
 
 
事業モデルとは、「お客様」と「商品」の組み合わせです。
どんな困りごとを持ったお客様に、どんな商品・サービスを提供するのか、です。
いまの自社の事業モデルを見て、どちらに問題があり、どちらをいじれば大きくなるのかを見極めることが非常に重要となります。
 
この分析から、ビジネスの原則が、再確認できます。
「その商品を、喜んで高く買ってくれるお客様に持っていく。」
お腹が一杯な状態のお客様に持っていけば、買い叩かれます。
そこにお客様がいなくなれば、干されます。
 
魚が沢山いる場所に船を回します。
そして、そこにいる魚が喜びそうなエサを準備します。
集めたスタッフに、竿とリールの使い方を教え、その通りにやってもらいます。
その時に、大漁となります。


「なぜこのような会社が、大きくなれるのか?」
この疑問への答えは、一つしかありません。
 
その会社が行う事業の『市場』が良いのです。
その市場には、お腹をすかしたお客様が沢山います。その商品を必要としています。
 
冒頭の会社は製造業であり、年商50億あります。
日本国内において、その業界では、廃業が多く、創業は全くありません。
そのため、営業しなくても引合いが来ます。それだけのボリュームをこなせる会社も他にありません。
そのため値段もそれほど厳しくありません。だから、毎年伸びています。
だから、内部はボロボロでも伸びていきます。
 
創業から4年で年商15億になった会社があります。
その会社は、ネットゲームの製作を請け負っています。
ネットゲームの製作の営業は社長が行います。そして、受注できます。1件の案件は、数億と非常に大きいのです。仕事を取ってから、人を集めます。
現在90名ほどの所帯になっています。
 
 
前者の生産性を見ると、1300万円あります。
一人の社員が年間1300万の粗利高をあげます。良い数字です。
しかし、儲かっていません。
毎年、収支はトントンです。減価償却分で赤に転じます。
 
1300万円稼いで赤ということは、内部に問題があるということです。
社内に不効率が沢山あります。
会議が多い、長い、参加者も多い。そして、生産的な会議運営がされていない、PDCAが回っていないため、数年ごとに同じ問題が繰り返されます。管理者が作業ばかりで、仕組みの改善に向かっていません。
部門間で協力しようという意識も弱く、セクショナリズムが強く出ています。
 
後者のゲーム製作会社は、生産性が900万円です。
その多くが人件費となります。しかし、それ以外の経費が極端に少ないために、十分な利益が出せています。
社長が営業をしています。社長と唯一人の事務スタッフで会社の総務経理のすべてを行っています。その2人以外は、すべて製作スタッフです。優秀な技術スタッフは居るものの、管理者が育っていません、そのため次の展開ができません。
請負仕事はできても、自社のオリジナルを開発する力はありません。
 
 
どちらの会社も、現在は非常に良い業績です。
今この時期に、何かに取り掛かっておく必要があります。
 
市場は絶えず変化します。人の欲には終わりがありません。
その欲が、流行りすたりや新技術を生みます。経済の正体は、人間の「欲」であり、「飽き」なのです。
その結果、すべての商品が、コモディティ化(凡庸)します。日用品となり、低価格化が進みます。
 
その時には、自社の事業体を変化させることが必要になります。正確には、それを見越しての変化が必要になります。
そんな変化に強い会社をつくる必要があります。社長の号令一つで、スピードを持って動き、変化する組織です。
 
 
社長は、魚の群れがどこにいるのか、どこに移動するのかを、掴むために外に出る必要があります。自らの嗅覚と経験も踏まえ、意思決定します。
その社長の号令を信じ、各部が竿やリールなどの道具の開発や、マニュアルなどの整備を進めます。
 
総粗利高を得られる市場を選び、それを内部で効率よくこなす。そして、その市場が落ち目になる前に、移動と変化をする。
事業とはこの繰り返しです。
 
年間40億円も売って儲かっていない、年商15億もあっても下請けから抜け出せない。これではもったいないのです。
年商40億売ってがっつり儲ける、何かしらのメーカーになる。
 
魚が獲れないのは、ダメなのです。
魚が沢山獲れても、船の内部で腐らしていてもダメです。
 
近海、遠海、どこを市場とするかで、その船の形を変える必要があります。
狙う漁獲高に応じ、船の大きさを選ぶ必要があります。
大きく儲けるためには、それなりの市場の規模が必要になります。そして、それだけの効率的な仕組みが必要になります。その仕組みを改善し続ける組織が必要になります。
 
魚のいる場所に船を回すのが社長の仕事です。
船長を信じて、この船に乗ってくれたクルーも幸せにしたいと思います。
 
船長、次はどこに向かいますか。

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