No.210:感動的なサービスを目指してはいけません。インスタ映えするビジネス、やってはいけません。我々が目指すのは、安定・・・!?

コラム№210

おしゃれで、素敵な事務所です。
十数名のスタッフが、そのワンフロアで働いています。
 
挨拶が終わるとF社長は、ため息を漏らします。
「当社は、なんでこんなにゴチャゴチャなのでしょうか?」
 
見回してみると、確かに多くのものが乱雑に置かれています。
そして、言われます。
 
「最近、ゴチャゴチャに疲れてきました。」


「感動的なサービスを提供する。」
「お客様の想像を超える圧倒的なサービスを提供する。」
これらを事業の目標に掲げることほど、馬鹿げたことはありません。
 
お客様は、感動するようなサービスを求めていません。
ましてや、想像を超えるようなサービスも求めていません。
お客様が求めているものは、ただただ『安定』です。お客様は、期待したものが、その期待通りに提供されることしか望んでいません。それ以上でも、それ以下でもありません。
 
「お客様に〇〇を提供することを約束します。その対価として〇円お支払いください。」
これが、提案であり、商談です。これに相手が合意した時に、成約となります。
そして、その約束通りにサービスが提供された時に、お客様は満足することになります。
 
私たちは、日々このような取引を繰り返しています。
そして、その中から、今後も続けて利用する先を選択します。
 
出張した先の駅で、朝食をとるために店を選びます。その店先には、モーニングサービス400円の貼り紙があります。分煙とも書いてあります。そこに入ることにしました。事前に抱いた期待どおりの時間を過ごすことができました。次回の出張時も「ここは使える」と記憶に留めました。
 
お客様の満足度は、抱いた事前期待が満たされるかどうかで決定します。
決して、感動的なサービスや、圧倒的なものを望んでいるわけではありません。
コーヒーもパンも美味しくはありません。店のスタッフの態度も可でも不可でもありません。落ち着いて仕事ができました。それで十分です。
そして、次回訪れた時も、きっと同じレベルのサービスを希望します。良くも悪くもしないでください。無茶苦茶美味しくなり、接客も良くなり、超人気店になられては困ります。また、クラシックをロックミュージックに変え、雰囲気を変えないでください。
 
 
お客様は、「安定」を望みます。それを正確に表現すると、「絶対に外したく無い」となります。
モーニングを食べに行く店も安定、ガソリンスタンドも安定です。車もパソコンも、壊れないこと。材料の仕入れ先にも外注業者に求めるものも確実性です。
いつも通りの品質。約束された通りの納期。実は、顧客である私たちは、すごく保守的です。そして、すごく臆病です。得したいよりも、損したくないという気持ちが強いのです。
 
「安定」の反対の言葉が、「動揺」です。
お客様は、この反対の状態である「動揺」を嫌がります。それも、極端に嫌います。安定が崩される時に、動揺が起きます。
 
ある日のコーヒーは、すごく美味しい。次の日は、マズイ。
ある日の接客は、すごく笑顔でフレンドリー。次の日は、不愛想。
材料の納品が、注文日の翌日という日もあれば、5日後という時もある。
前回はすごく丁寧な仕上がりだった。今回は荒い。
 
これが、お客様としては一番困る状態です。安定を乱され、動揺させられます。
 
不味いなら不味いという安定です。不愛想なら不愛想という安定です。その立地だけで利用価値はあります。たまに気を利かせないでください。変に期待を膨らませないでください。
 
朝起きてから、昼、そして、寝るまで、我々は日常全く「感動するようなサービス」を利用することはありません。最近、「感動するようなサービス」を利用した記憶はありません。
 
「感動」を事業の目標にしてはいけません。
使いやすいから使う、使わざるを得ないから使う、使ってみたら便利で手離せなくなる。そのような事業をつくるのが我々の目標です。
 
そして、その場、その業界で、長く稼がせてもらいます。
感動は望まれていません。また、飽きられます。
インスタ映え、という言葉があります。インスタ映えする、イコール、珍しいのです。だから、飽きられます。インスタ映えするようなビジネスはやってはいけません。


年商数億ビジネスの社長が、全力で作り上げるべきものが「安定」となります。
 
どの営業担当も、平均して同じように売れる。
どの社員も、同じ質のサービスを提供できる。
景気が変動しても、同じように利益を出せる。
そして、毎年同じように組織として成長している。
 
こんな状態を目指し、私たちは日々経営をしています。日々仕組みをつくっているのです。
 
事業においては、安定した「評判」を求めます。
〇〇の専門設備と言えば□□。
□□会社の〇〇がすごい!
この安定した評判を得るために、市場を選定し、事業を構築します。
自社が独占できる市場、または、参入障壁をつくることができる市場を選びます。そして、その分野に集中投資することで、サービスを改善し、認知度を拡げ、さらにがっちり自社のポジションを固めます。
「安定させることのできる市場」を選び、「安定させるための投資」をします。
 
そして、安定したサービスを提供するために「仕組み」を作ります。
どの営業担当も同じように説明できるように、提案書を整備します。
スタッフが入れ替わっても、情報が残る様にデータベース化します。
マニュアル化し、訓練制度で出来るようにします。
人による接客の裏では、システムが機能し、進捗を管理しています。
「安定」を追求するための仕組みなのです。
 
そして、安定して変化していくために「組織」を作ります。
今期も、現場は同じ感度で問題を上げてきます。
管理者層は、問題を分析し、やることを取捨選択し、それに取り組んでいます。
前期も、今期も、来期も、予定通りの率で成長しています。
変化する環境に安定の適応力を発揮し、そして、安定して成長していきます。
 
我々、経営者がほしいのは、『安定』です。
この『安定』を求めている、『安定』をつくっている、という正しき認識を忘れてはいけません。
 
 
世の風潮の一面だけに捕らわれてはいけません。
私たちの周りには、「変化しろ!」、「変化しなければ生き残れない」、「変化こそが正しい」という価値観が、より強く渦巻いています。
それは、時として、脅迫とも受け取れるほどです。
それに悩む人もいます。「自分だけが変わっていない」と取り残された感も持ちます。
 
ビジネス関係のテレビや日経新聞を見ると「新サービス」、「新技術」というニュースが並んでいます。経営者も焦る気持ちを持ちます。
「変化!」、「変化!」、「変化!」、まるでそれは「病(やまい)」のようです。
 
それに心を乱されてもいけません。それに経営者としての指針を奪われてもいけません。
我々が、今ほしいのは「安定」です。「変化」ではないのです。
「安定」を求めて、事業、仕組み、組織をつくっています。
 
変化病を罹った経営者は、「安定」に対する取組みを軽んじるようになります。
多くの勉強会に参加します。そして、安心します。自分が勉強しているという状況に安心します。
また、社員にも「変化」を求めます。その結果、「教育」を強くします。自己啓発の読書を推奨します。気づきを強要します。
 
これは、我々が目指す方向とは、真逆に向かうことになります。
そういう経営者のもとでは、仕組みづくりの取組みは弱くなり、安定から遠ざかることになります。
 
我々が、ほしいのは安定したサービスにより、安定した売り上げです。そのために欲しいのは、安定した「人」です。優秀さではありません。
そのための仕組みなのです。仕組みこそが、安定をもたらします。
 
人に向かう限り、「安定」は得られません。安定を壊す一番の要因は、人になります。社員という人には、気分にも能力にもバラツキが大きくあります。そして、入れ替わっていきます。管理者、経営者も例外ではありません。
 
 
冒頭のF社は、その後仕組みづくりに取り掛かりました。
多くのことは行いません。
一つひとつの事柄を決め、そして、それを安定させるために文字を起こし、そして、社内に落としていく。それが定着するのを確認します。それにより、その一部が安定します。そして、次の一部に手を付けます。
社内の挨拶の仕方を安定させます。コールセンターの機能を安定させます。デザインの質を安定させます。
 
その進捗とともに、社内の混乱は減ってきました。また、お客様からのクレームも減ってきます。
一年もすると、社内はすごく静かになりました。それでも、業務は問題なく流れています。
 
F社長は、言われます。
「当時を振り返ると、何で毎日あんなに忙しく過ごしていたのか解りません。何をやっていたのでしょうか。(笑)」
 
 
安定をさせる、一つひとつ安定をさせていく。その意識を持つ必要があります。
目に入る社内の様子のうち、どれだけが「安定」しているように見えるのか。
10%、20%であれば、それは安定とはほど遠い状態と言えます。
いつどこの箇所の安定が崩れ、混乱が広がるか解りません。早く安定領域を増やしましょう。
 
 
一般的に、「安定」こそが、組織や経営にとっての悪と言われています。
会社は、安定した時に倒産に向かう。経営者が安定を求めたら終わり・・・。
 
大きな組織では、それはその通りかもしれません。
しかし、私たちのような年商数億の企業では、そうではありません。
「安定」していないことにより、引き起こされる害のほうが圧倒的に大きいのです。いろいろなものが安定していないから、提供するサービスのバラツキが大きいのです。そして、お客様からお叱りをうけるのです。
 
変化は、敢えて気に掛ける必要がありません。
それは、放っておいても社長が起こします。それが、どの社長も持つ性分です。
変化は「社長が居れば」十分です。
だからこそ、社長は「安定」を意識しなければなりません。
御社に今必要なのは、安定です。安定した部分です。社員と共に、安定させるための仕組みづくりを進めてください。
 
年商数億から年商10億に進む時に必要なのは、変化ではなく、安定です。
今、御社では何を安定させる必要がありますか?

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