No.227社長が全員経営経営者感覚を持てと言い出したら要注意! この言葉こそが組織を崩壊させる

№227:社長が「全員経営」、「経営者感覚を持て」と言い出したら要注意! この言葉こそが組織を大崩壊させる!

急に寒くなった日の午後、S社長が当社に相談に来られました。
「矢田先生、全員経営という言葉を、どう思われますか?」
 
お話を御聞きすると、父である先代は超ワンマンであり、その経営のスタイルが嫌で嫌でしょうがなかったとのこと。自分が社長になり、経営の「形」を探している時にこの言葉に出会いました。
 
矢田は、言いたいことを押し殺しこの質問を口にします。
「全員経営って、どのような意味でしょうか?」
 
S社長は考えられます。「・・・・」


組織とは役割分担、すなわち、分業です。
分業には、横と縦があります。
 
横の分業とは、営業、企画、製作、事務などの業務の役割分担を指します。
それぞれの業務の「塊」を、専門部門が行うことで、格段に効率を高めることができます。また、その専門性を得ることができます。
 
縦の分業とは、現場層―管理者層―経営層という形に、その役職を役割分担します。同様に、役職を専業にすることで、格段に効率を高めることができます。また、各々が高い専門性を得ることもできます。
 
この縦の分業を理解するために、下記のような2つで表現することもできます。
 
経営層の役目は「決定すること」、管理者層の役目は「実現すること」、現場層の役目は「実行すること」。
 
経営層は「中長期」の時間スパンを担う。すなわち、3年から5年。管理者層の時間は「短期」、すなわち1年、2年。現場層の時間は「今」、今週・今月・半期。
 
この役割分担こそが、階層となります。
それぞれの役割を下記にまとめます。
 
経営層は、「自社の特色をどこにつくるのか」、「環境はこう変化するだろう」から、中長期の方針を決定します。
管理者層は、与えられた部門の目標を達成するために、具体的な施策を考え、部下に作業指示を出します。
現場層は、指示されたことを出来るだけ早く、そして、精度高く実行します。現場層には、実行責任はあるが、結果責任はありません。
 
このそれぞれの役割分担が適正に機能するからこそ、会社は狙い通り顧客を満足させ、その結果儲けることができます。また、この先も、進化を続け存続が可能となります。
 
今日のメシを得るのも大事です。未来のメシの種を植えるのも大事です。
そのための役割分担となります。
 
そして、我々は、この役割分担を機能させるために、仕組み(組織)を整備しています。この仕組づくりに取り組まないと、たちまち役割分担は崩壊することになります。
 
「経営層が、案件を持って駆けずり回っている。」、「管理者は、不具合の対処に追われている。」、「現場のスタッフが、育ったころに辞めていく。」
これらは、「縦」の役割分担の仕組みづくりを後回しにした、ツケと言えます。
 
年商数億、社員数名の時から、この準備をしなければなりません。
各部門が受持ちの業務をしっかり担う仕組み、各階層が受持ちのスパン(この先の時間)をしっかり担う仕組み。この仕組みづくりをしなければ、当然、進む先には混乱が待っています。そして、たちまち収益性は悪化します。
中長期を担うはずの経営者や管理者が、そのための取組みをできていなければ、この先尻すぼみしていくのは目に見えています。
 
この仕組みが自然に出来上がることはありません。避けては通れないのです。


各部・各担当が、プロ意識を持って、その役目を果たす。顧客を満足させるため、もっと効率を高めるために、全社員が一生懸命に考え行動する。
 
昨今その必要性はより強くなっています。
その理由は大きく三つあります。
一つ目は、「変化の速さ」です。変化に対応するためには、現場がその時々に応じて柔軟に、適切に対応することが求められます。
二つ目は、「専門性の深さ」です。一つひとつの分野の専門性は、どんどん深くなっています。同じ部に居ながら、お互いの専門分野は解らないという状況があります。また、その上司やリーダーも、その分野が解りません。それでもマネジメントする必要があります。
そして、三つ目は、「見え難さ」です。サービス特性の高い事業では、製造業と違い、その作っている物もそのプロセスも目では見えません。そのため、その品質も進捗も管理が難しくなります。
 
経営者や管理者が、すべてを管理したり、指示を出したりすることはできません。
そして、やっている本人達しか解らない勘所や気づけない課題があります。
一人ひとりが、「やっていることの目的や方針に適応させる」、「主体性を発揮する」、「問題意識を持ち、アイディアを創り出す」ことが必要になります。
 
そんな個人の自主性と創造性の発揮を支える仕組みが必要になります。そして、それを個人のモノではなく、会社のナレッジに変えることが必要になります。そこにこそ、会社の仕組みと強さがあります。
 
『全員経営』とは、この状態を指します。
「各部門・各担当が、一所懸命考え行動する。」
「全員経営」という言葉を、松下幸之助氏、小倉昌男氏が使っています。そこから読み解くとこのようになります。
素晴らしい言葉です。そして、その通りです。
 
「全員経営」を「全員が経営者意識を持つ状態」と、間違って認識してはいけません。この「間違った認識」と、「経営者の弱さ」が出会った時に嫌な臭いを発生します。
「社員全員が経営者感覚を持て!経営者として考え、経営者として行動せよ」と無茶難題をふりまきます。
 
このような発想に至ってしまう時には、経営者自身も追い込まれています。
「この先の自社の方向性が見えない。」、「成長が鈍化している。徐々に業績が悪化している」。そして、その状況に経営者として明確な方針を出せないことに焦りを持っています。
そんな弱った時に、この言葉によって悪い方向に触発されてしまいます。
「自分たちも経営者になったつもりで、考えろ!」、「自分たちで自発的にどんどんやってよい」という号令を発します。
 
それは、分業をそのまま崩すことになります。「縦」の役割分担を否定することになります。
実行責任を負う現場層に「経営者感覚」を求めているのです。彼らに必要なのは、一つの業務を追求するという職人根性です。
与えられた部や課の目標を達成するために存在する管理者層にも、「経営者感覚」です。彼らに必要なのは、具体的な目標とその達成のための方策です。それが与えられていません。その状況で「経営者感覚を持て」と言われるのです。
 
当然、彼らには、その「社長の無茶ぶり」は見えています。心のなかで、「それは社長の役目でしょ」と思っています。でも、言えません。言わずに、我慢します。または、去っていきます。
 
 
「全員経営って、どのような意味でしょうか?」
冒頭のS社長、私の質問に少し考え、「正確には、解りません。」と返されました。
実は、S社長自身も、この「全員経営」と言う言葉に、違和感を持っていたのです。
それを、矢田に意見を求めたのです。
 
この面談の最後に感想を言われました。
「全員経営の第一歩は、私が社長の役割をしっかりすることですね。」
この冬一番寒い日が、素晴らしい経営者との出会いになりました。
 
この「経営者感覚を持て」とは、経営者の役割の丸投げになります。分業の放棄なのです。つらい時ですが、この言葉のイメージに、逃げてはいけません。社長の役目を坦々とこなすのです。
 
この先も、経営にまつわる言葉や手法が現れては消えることを繰り返していきます。それにいちいち付き合う必要はありません。
原則に変わりはありません。
社長の役割に変わりはありません。
 
社長とは何をする者か。それを果たすだけです。
そして、自分とは何を成す者か。自問自答を繰り返すだけです。

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