No.236:経営計画は一冊の手帳にまとめなさい、は正しいが、入れてはいけない内容があります。それこそが、組織の力を削る要因になります。

№236:経営計画は一冊の手帳にまとめなさい、は正しいが、入れてはいけない内容があります。それこそが、組織の力を削る要因になります。

良く晴れた温かい日です。
当社に相談に来られたF社長は、浮かない表情です。
「すごく不安です。漠然とした焦りがあります。」
 
事前に、データで資料は頂いていました。経営計画書を観れば、その会社でどのような問題がおきているのかある程度予測できます。
 
そして、F社長の手元には、分厚くて、立派な経営計画書があります。
その経営計画書の姿を見て、F社長の持つ不安に納得がいきます。


経営計画書には、良い経営計画書と悪い経営計画書があります。良い経営計画書は、組織の本来持つ力を発揮させるのに役立ちます。逆に、悪い経営計画書は、組織の力を弱めることになります。
 
残念なことに、多くの企業では組織の力に悪影響を及ぼす悪い経営計画書をつくっています。その一つが次のものです。
「経営計画書に盛り込みすぎ」
 
「盛り込みすぎ」は、覿面に管理者や社員のパフォーマンスを悪くします。経営計画書の内容は、少なすぎても、多すぎてもダメなのです。やはり適量があります。
 
儲かる事業は、設計によって「創られ」、実行によって「造られる」ことになります。一つの事業には、一冊の『事業設計書』が必要です。その一つの事業を行うために、一つの組織がつくられます。
 
事業設計書により共通の目標や方針を持つことで、各プロフェッショナルが協力することができるのです。その書がその組織に統制を与えることになります。
経営者にとって事業設計書とは、組織を統制するための最強のツールとなります。
 
それにより、社長が「創った儲かる構想」が、スピードを持って「現実に造られる」ことになります。結果、大きな展開と大きく儲けることができるのです。
 
一つの組織には、一つの事業、一冊の設計書が原則となります。一つの組織に、複数の事業を受け持たせば、その力は分散することになります。


多くの会社では、一冊の『経営計画書』に、自社で抱えている複数の事業を入れ込んでいます。そして、会社としての其々の事業への力の入れ方やバランスを表現しています。
 
その結果、組織の力を奪っているケースは多くあります。複数の事業の内容を載せるということは、その数だけ主となるメッセージが存在することになります。
A事業では、「〇〇サービスを強化する」。B事業は、「〇〇のエリアでNO1をとりにいく」。意識の「分散」が起きます。
 
そして、その一冊の経営計画書の半分は、自分とは関係ない事業が占めています。
A事業を担当する社員にとっては、B事業は関係ありません。B事業のスタッフには、A事業は知っておけば良い程度です。
経営計画書は一年を通して使用するものです。方針の確認や全ての会議に持って参加します。一年を通して、「自分とは関係ない内容」が存在し続けることになります。
 
また、複数の事業があるために、一つひとつの内容が少なくなっているケースがあります。事業設計書は、一つの事業の戦略や各方針だけで、最低10ページにはなります。それぐらいあって、初めて各部課や社員は動けるようになります。事業が2つあれば、それぞれに10ページが必要になります。
 
しかし、事業が2つになっても、10ページのままなのです。10ページもあると体裁は整っています。経営計画書らしくなっています。そのため、その分量で満足してしまうのです。
 
その結果、A事業で、本来10ページあるはずが、5ページになっているのです。B事業の社員に関係する内容も、半減しているのです。内容が減った分だけ、その事業を担当する社員の動きは鈍くなります。
 
さらに悪いことに、事業の数だけ、社長の意識が分散することになります。社長の意識が分散することにより、それぞれの事業が5ページに減ってしまったのです。または、社長の興味のある事業はページが多く、興味を失った事業は少なくなります。A事業は8ページ、B事業は2ページ、C事業は2行という状態です。B事業とC事業の社員は、「興味が無い」というメッセージを受け取ることになります。
 
経営計画書は、社長の考えをまとめたものとなります。事業の数だけ、分散しやすくなります。そのため、意識して一つの事業を深く考える時間をつくる必要があります。B事業にも、C事業にも、それぞれ数十時間は必要になります。
その結果できあがった各事業10ページの経営計画書が、各スタッフに行動の指針を与えることになります。各組織の力を発揮することになります。
 
その能力を持つ社長だけが、「複数の事業を展開すること」を許されるのです。それこそが、ついてくる社員への責任となります。
そのため、多くの年商10億円以上の社長は、「自分にはムリ」と一つの事業だけを選ぶことをします。分散が嫌で、一つだけに絞ることをします。


冒頭のF社には、3つの事業がありました。やはり、一つひとつの事業で見た時には、記載された内容(量)は少なくなっていました。
 
そして、もっとマズイことに、別次元の内容まで入っています。就業規則や人事制度、緊急連絡先まで、何から何までもが、盛り込まれているのです。
 
F社の組織力を弱めている「3つの大きな要因」がありました。
・複数の事業を、一つの組織がやっている。
・それぞれの事業についての内容が、絶対的に足りていない。
そして、
・本業とは、別次元の内容までが盛り込まれている。
 
当然『一冊』の経営計画書としては、ボリュームは多くなります。分厚く立派に見えます。立派に製本もされています。それを見て銀行の担当者や経営者仲間は「すごい」と言ってくれます。
 
しかし、社員からすると使えないものになっています。
厚さの割に、本当に重要な戦略や方針が薄いのです。当社はどのように特色を出すのか、何を重点的に行っていくのか、という明日からの戦い方やその優先順位が解り得ないのです。
 
経営をするうえで、「事業の戦略や方針」も「職場のルールや安全」も、どちらも大切です。しかし、それは全く違う話なのです。これを一冊で伝えることは無理なのです。本来、別々のものなのです。
 
F社長は、事業ごとに事業設計書の作成に取り掛かりました。また、職場のルールや就業規則も別にまとめました。
 
F社長は言われました。「いままでの経営計画書は、内容も薄く、全然整理されていませんでした。そのくせ、立派な装飾をしています。当時の私そのものでした。(笑)」
 
経営計画書とは、社長の思考そのものです。
シンプルな思考からは、シンプルな経営計画書が生まれます。ゴチャゴチャな思考には、ゴチャゴチャな経営計画書が生まれます。
 
書いては消しての繰り返しで整理が進みます。時間というよりも、回数が必要になります。
社長の頭が整理された時には、経営計画書もすごくスマートになっています。

矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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