No.306:会社の中にある三つの意思決定とは。仕組みでそれをできるだけ自動化する。

№306:会社の中にある三つの意思決定とは。仕組みでそれをできるだけ自動化する。

小売舗を複数展開するМ社長の元には、良い話しがどんどん来ます。
「〇〇市に出店しませんか?」、「〇〇のショッピングモールに空きが。」。
 
その一方で、各店長や社員からの電話も来ます。
「週末の商品が足りません。」、「お客様からお叱りの電話があり・・・」。
 
M社長は、言われます。
「毎日のどたどたで、疲れました。」
 
確かに、M社長の顔には、疲れがでています。矢田は確認します。「それで、方針書づくりは進んでいますか?」
 
M社長は、答えます。
「忙しくて、手を付けられていません。」


仕組みは、人の意思決定を助けるためにあります。
・お客様から、ある商品を取り寄せできないか?と問い合わせがありました。
・仕入先から、月内に前倒しで納品したいと相談されました。
このような場合どうするべきか、その意思決定を助けるために仕組みはあります。
 
・仕入可能商品と不可の商品が、一覧表になっています。
・在庫についての方針書を見れば、特例条件が載っています。
仕組みがあるお陰で、我々は正しい意思決定ができます。その結果、仕事をスムーズに行うことができます。また、その一回のイレギュラーを反映することで、仕組みを更に成長させることができます。
 
人がする意思決定には、3つのレベルがあります。
「選択」、「判断」、そして「決断」です。
この意思決定こそが、組織の役割分担とも言えます。
 
作業層の社員は、毎日、『選択』を行っています。
注文が入ると、それをデータベースに入力するという選択をします。納品日が決まったので、お客様に連絡を入れるという選択をします。『選択』というだけあって、考える必要はありません。
この正しい選択によって、業務が進められていきます。正しい選択をして物や情報を動かすことが「作業層の役目」となります。
 
作業層の業務は、すべてが仕組みで支えられることになります。
タブレット上でカーソルを動かせば、選択肢が出てきます。「値が〇以上なら、〇〇に発送する」と条件があるため、運送部門に依頼します。
新人の作業層の社員は、仕組みに沿ってその選択とその動作が正しくできるようになることが必要です。それを、サポートする制度のことを「訓練」と言います。
 
主任やリーダーと呼ばれる人達のことを、判断層といいます。その名の通り、『判断』をするのが主な役目です。
業務では、日々何かのイレギュラーが発生します。「材料の状況が変わった」、「仕入先から、急に納期延長の依頼があった」これらは、「選択」の範疇にはありません。その業務の目的や会社の方針、そして状況から『判断』する必要があります。
 
そして、それが今後も起きる頻度が高ければ、その一度行った『判断』を、仕組みにします。データベースやマニュアルを整備することで、それを『選択』レベルにします。次からは、作業層が自分達だけで、こなせるようになります。そして、判断層は、次のイレギュラーに意識を使うことができます。
 
経営者や部長クラスの役目は、『決断』になります。決断には、リスクが伴います。そこには会社のビジョンを理解しておくこと、そして、信念が必要になります。決断というだけに、その状況や結果については、自分達の経験にはないのです。この下される決断が、会社の未来に大きな影響を与えます。いつか来るべき決断の時のために、「経営者が存在する」と言っても過言ではありません。
 
 
給料の大きさは、その担う『意思決定の大きさ』によって決定づけられることになります。作業層は、『選択』をしているからこそ、それなりの給料になります。主任やリーダーも、『判断』に見合ったものになります。社長や部長は、『決断』を担うだけに、その額は大きくなります。当然、それをするべき時に行わない、また、間違えることがあれば、真っ先に減額の対象となります。


冒頭のM社は、これまで仕組みづくりに全く取り組んで来ませんでした。
そのため、多くの業務が、『選択』レベルになっていません。作業層ができる『選択』の幅が、非常に狭いのです。それは、『判断』レベルの業務が多いことを意味します。店舗のスタッフに、毎日、何かしらの「判断」が求められる状態だったのです。
 
・お客様から返品を求められた。レシートをお持ちでない。いいのだろうか。
・連休に入る。少し多めに仕入れていいのだろうか。
 
仕組化されていないということは、『判断』することが多い状態を意味します。
毎日、作業層が考え『判断』をしているのです。そして、その『判断』が、当たっていれば問題にならず、外れれば問題になるのです。そこに確実性はありません。
頻繁に、M社長には電話がかかってきます。また、店舗に出向かざるを得ないのです。
 
そして、M社長は、「その間違いを犯した相手」に向かってしまいます。優しい声で、「どうして間違えたの?」と尋ねます。その本人は縮み上がり、「良いと思ったから。」と答えます。
 
そんな毎日の繰り返しです。社員は、『判断』が多いために疲れていました。また、積極性も失っています。失敗を恐れ、「解らないことがあれば、すぐに上司に訊く」ようになりました。こうして、多くの「指示待ち社員」が出来上がりました。
 
店長や管理者も疲れていました。判断の基準となる、方針書がありません。そのため、正しく『判断』することができないのです。店舗スタッフから訊かれても、確信を持って指示を出せません。M社長に訊けば、「少しは自分たちで考えなさい」と叱られます。
 
その結果、各店長は「隠れて自分で判断する」ようになってきました。そして、その中のいくつかが、トラブルまでに発展するのです。
 
 
スタッフは、解らないことがあるとすぐに店長に訊きます。
店長は、判断に自信が無いと、すぐに社長に訊きます。勝手に判断したことが、トラブルになります。それが、M社長の忙しい日々の原因だったのです。
 
それでも、新たな出店の話が来ます。店舗を出せば、それだけ売上げは増えることになります。同時に、更にトラブルが増えることは目に見えています。
 
仕組化の必要性を痛烈に感じたM社長は、決意をします。「当社がこれ以上大きくなるためには、仕組化が必要である。」そして、当社に依頼をしました。
 
それでも、なかなか今までの癖は抜けません。指示を口で出してしまいます。仕組みではなく人に向かってしまいます。私は、辛抱強く、「文章を書いてください。文章を書いた分だけ、楽になりますから。」とお願いをします。
 
事業の変革に合わせ、良い話が更にM社長の元には、来るようになります。
「〇〇市に出店しませんか?」と開発業者から話がきます。
「〇〇のショッピングモールに空きがでました。」と、大手からの案内もあります。
 
そして、M社の評判を聞いて、多くの提案も入るようになります。
「このような商品を取り扱っていただけませんか。」
「この業務を、すべてアウトソーシングしませんか。」
 
その度にM社長は、考えます。そして、一つひとつに答えを出していきます。すべてに『判断』をしていきます。
 
そうです、M社長自身も、『判断』に振り回されていたのです。そして、その中には、『決断』レベルに近いものもあります。その一つひとつの意思決定で、M社長自身も、消耗をしていたのです。
 
M社長は、事業設計書づくりに向かいました。書いては消しての繰り返しを行います。その繰り返しにより、M社長の考えは固まりました。
「M社の事業の形はどうあるべきか」、「どのように展開していくのか」、「組織はどうあるべきか」、すべての事柄に信念が宿ったのです。
 
 
その結果、一つひとつの「良い話」に、楽に答えが出せるようになりました。
「このエリアへの、出店は考えていません。」
「この商品はぜひ扱わせてください。他は必要ありません。」
その一つひとつに、以前のように『考える』必要も無くなりました。
『判断』レベルではなく、その多くを『選択』レベルに落とせたのです。
 
M社長は、言われます。
「私がブレブレだったのですね。だから、方針も決まらず、仕組みづくりも進まず。彼らを振り回していたのは私だったのです。」
 
M社長の事業に関する方針が決まったことで、すべての業務の方針もすぐに固めることができたのです。
 
その数か月後には、社長の「自由な時間」は格段に増えていました。電話の本数も減り、店に呼ばれることもほとんど無くなりました。
その一方で、店長や社員が自分達で完結できる業務が増えてきました。それに合わせ、社内も明るくなっていきます。
 
 
まとめです。
 
仕組みのある会社では、社員は「選択」で日々の業務を回していきます。そして、管理者は、自信を持って「判断」ができます。社長は、「決断」のために、その精神の多くを使うことができます。
 
仕組みのない会社では、社員は「判断」の日々に疲弊することになります。管理者は、自分で「判断」することから逃げるようになります。そして、社長までが、多くの「判断」のために、疲弊することになります。
 
仕組みにより、その多くを「選択」レベルにできます。
それにより社員を活かすことができます。
その結果、社長自身をも、活かすことになります。

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