No.366:採用力を高めるためにやるべきこととは。人が採れない会社がつぶれる時代が来た。

№366:採用力を高めるためにやるべきこととは。人が採れない会社がつぶれる時代が来た。

人が少し戻った東京、いくつかの店は、帰りのサラリーマンで満席になっています。工業塗装業K社長は、騒ぐ彼らに顔を向けたまま言いました。
 
「当時は、特効薬ばかり探してきました。まるで、やせ薬を求めるように。」
 
当時とは、約3年前のことを指します。
その頃のK社長は、完全なる職人社長でした。現場で自分が先頭になって朝から晩まで動いていました。
 
その状態を脱するために色々なものに手を付けたのです。
社員研修はもちろんのこと、環境整備の取組み、社員とのコミュニケーションのとり方など。そして、ヘッドハンティング。
 
K社長は、付け加えました。
「実は、先生のコンサルティングを受け始めても、特効薬がもらえるのではないかと、どこかで期待を持っていました。」


年商10億に進むためには、『採用力』の獲得が必須になります。
事業をスピードをもって展開するためには、そのスピードに合ったタイミングで人が採れる必要があります。
 
展開のステージに入ると、その成長は、昨年対比140%になります。そのスピードに合わせて、営業担当や製造スタッフを採用していきます。また、営業所や支店を出したその地域でも、タイムリーに人が採用できる必要があります。
 
展開の段階で、『採用力』が無いと、厳しくなります。採用に、多くの手間と金、そして、精神力が奪われていきます。事業の展開に、ストップがかかります。そして、その状況に拍車をかけるように退職者が現れます。
 
「人が採れない」といちいち悩んでいる状態では、事業を展開することなどできないのです。『採用できる会社になる。』これも、年商10億円に進むための条件なのです。
 
採用力を高める時には、まずは、次の2点を考えることになります。
 
1.エリア:自社の求人の対象者数はどれぐらいいるのか?
車移動が主な地域であれば、半径40分に居る人が対象になります。電車であれば、会社の最寄駅から、「下流」の沿線の人が対象になります。
 
そこに、「自社の求人条件に合った人が、どれだけいるか」となります。
地方や郊外にいくほど、エンジニアや管理部門系の知的労働者は少なくなります。逆に、作業スタッフや運転手など、肉体労働者が多くなります。
 
そう考えると、対象者は、実際のところ「10名」もいないのではないかとも思えてしまいます。対象者のいないところに、求人広告をばら撒いていることになります。
 
「調達が可能な人で回せる事業モデルに変える」、または、「事業所の移転を検討すること」になります。
 
2.魅力:他社と比較した時に、選ばれるだけの魅力があるか?
「顧客から支持され、市場で勝っている事業」は、求職者にも魅力的に見えるものです。求職者も、「勝ち馬に乗りたい」、そして、「自分も活躍したい」と考えるものなのです。
 
逆に、「相手合わせのビジネス」や「特色が解らない」などの事業では、当然敬遠されることになります。そこからは「売ることに苦労すること」も、「給与が増えないこと」も、感じ取ることができます。
 
他には、「給与や福利厚生などの条件」、「会社の雰囲気やマネジメント体制などの組織」も観られることになります。
 
この「事業」、「条件」、「組織」という3つの視点で比べられます。その結果、同じエリアの同業者に勝って、選ばれる必要があります。


3年前のK社は、完全に「採用できない会社」でした。
事業は、製造工場であり、完全なる「町工場」でした。数社の大手取引先から来た仕事を、しっかり納期と品質を守り、納める加工業です。古い設備に老朽化した工場です。社長も社員も、一日が終わると全身真っ黒になっています。
 
そんな、悪い労働環境に疲れてか、退職率は非常に高い状態にありました。その欠員補充のために、急いで募集をかけます。高い求人費をかけても1、2件の応募しかありません。次の募集でも来るかも解りません。また、採用者がゼロでは、広告費を捨てたようにも感じられます。その結果、その人を採ることになります。
 
その中の、三分の一は、最初の一か月で辞めていきます。そして、半年以内に、もう三分の一がいなくなります。残った人も、いつ辞めるか解りません。
 
採用しては辞め、採用する。そして、また、辞めるの繰り返しです。
そんなことを、ここ何年も続けていたのです。そんな状況にK社長は、疲れ切っていました。
 
K社長は、当時を振り返り言います。
「当時のうちに、喜んで来る人など、いるわけがないのです。事業に特色はなく、職場は汚い。そして、条件も悪いのです。」
 
そして、付け加えます。
「どうせ来ても、ろくでもないやつらばかりです。こんな会社ですから。」
 
当時のK社は、完全なる町工場であり、事務所も薄暗く雑然としていました。
そして、休日は年間105日と少なく、賞与は有るものの少額です。退職金制度はありません。
 
この状況を打破するために、K社長も動かなかった訳ではないのです。
経営者の勉強会に参加していました。そこで習い、経営理念を作り、事務所や工場の壁に張り出すことにしました。また、会社が変わるためには新卒が良いと聞き、新卒採用にもチャレンジしました。
ある経営者の話に感銘を受け、環境整備に徹底的に取り組んだ時期もあります。コンサルタントの指導を受け、人事評価と社員面談も導入しました。
そして、ヘッドハンティング会社にも依頼し、「右腕候補」も獲得しました。
 
他には、社員を外部の研修に行かせました。社長自身もコミュニケーションの研修に通いました。
 
それらのすべてが、大きな成果に繋がることはありませんでした。
 
K社長は言いました。
「長い時間を、特効薬探しに費やしました。でも、解りました。経営に、特効薬は無いのです。それに気づき、先生にお願いした次第です。」
 
K社には、特色のある事業も、しっかりした組織も、他の会社並みの条件も、何もなかったのです。
唯一救いなのは、工場の立地が良かったことぐらいです。交通量の多い幹線道路際の工業団地の中に、K社はあります。そのため、対象となる人数は、多かったのです。(こんなK社でも、募集をかければ、数名くるということは、エリアが良かったことが要因にあります。)
 
 
K社長は、事業モデルの変革から手を付けることをしました。
いままでの職人型のモデルを変える必要があります。社長の熱意と技術に支えられた、昔からの取引先がいるだけの事業モデルです。ここに特色はありません。
 
また、今のままでは生産性が低過ぎるのです。そのため、休日を増やすことも、並みの賞与を出すことも、退職金制度を新設するのも無理なのです。
 
狙う顧客と自社のサービスが見えてきました。そして、営業すると実際に新規顧客が開拓できます。また、その単価は、いままでよりも遙かに大きいのです。
その事業モデルは、「町の加工工場」ではなく、「特殊塗装の会社」と変わりました。
 
顧客からの塗装に関する相談や課題に答えることで、仕事を取っていきます。また、将来的には、自社独自の塗装技術や材料を販売する構想も見えてきました。
 
これからのK社に、必要な人材の要件が見えてきました。それは、完全なるエンジニアです。今までのような単調作業をする人ではなかったのです。また、会社の内部を強化するために、管理部の仕組みを作ってくれる人材の獲得も急務と解りました。
 
「もう募集をかけていいでしょうか?」とK社長の質問に、「まだ受け入れる状態ができていません。もう半年辛抱をお願いします。」と私は答えました。
 
組織づくりを進めます。経営計画書をつくりPDCAを回します。
また、内部の仕組化を進めていきます。案件の見える化とマニュアルによる標準化を急ぎます。それと合わせ、事務所の内装にも手を付けました。
 
そのタイミングで、採用活動に取り掛かったのです。
エンジニアと管理部門の社員、そして、同時に工場の作業層の募集も行いました。
 
すると、エンジニアと管理部門に、それぞれ5名ほどの応募があったのです。
その人達全員が、いままで自社にいなかったレベルです。顧客企業の担当者と同じレベルの人材なのです。
 
そして、工場の作業層にも10名以上の応募がありました。そして、その人達のレベルも高いのです。そこそこの規模の工場で働いてきた人ばかりです。品質管理の考え方や身だしなみや整理整頓など、基本ができています。
 
 
これからです、K社の快進撃が始まります。
一時のコロナ禍の影響により売上げの落ち込みはあったものの、基本的に、上り調子です。新工場建設に向けても動き出しました。
また、生産性の向上と共に、休日を徐々に増やし始めました。
 
工場を管理する工場長、経理労務の仕組みをつくる管理者、顧客と案件の打ち合わせをするエンジニア。気づくとK社には、「人材」が揃っていたのです。
 
そして、先日、営業担当者を採用することができました。その方は、中規模企業で、営業課長までやった人です。ある出会いから、その方から「ぜひ、残りの人生をK社に使いたい」と言ってもらえたのです。
 
K社は、本当の『採用力』を獲得したのです。
それは、テクニックではありません。会社としての本当の採用力です。
欲しいタイミングで人が採用できます。そして、これらの事業の伸びに先行して採用もできます。
 
採用力のある企業は、益々伸びることになります。
より優秀な人に選ばれるのです。そして、定着率も高いのです。その人材が更に事業を良くしていってくれます。好循環が生まれます。
 
逆に、採用力の無い会社は、これからの時代では淘汰されることになります。採用と退職に体力を削られていきます。人がいないために、受注量を減らしたり、店の営業日を減らしたりすることになります。事業の継続が出来なくなるのです。
 
本当の力を得ることです。
簡単に、楽して、手に入る素晴らしいものなど無いのです。
 
腹を据え、ぶれずに一つひとつ積み上げることです。
確実に3年後には、会社は変革を成し遂げることになります。

●コラムの更新をお知らせします!
 下記よりメールアドレスをご登録頂くと、更新時にご案内をさせていただきます。メルマガ限定の矢田のショートコラムもあります。
 
メールマガジンへご登録いただいた方へ、当社で開催しているセミナーの冒頭部分(約12分)をまとめたセミナー動画をプレゼント中!
ぜひご登録ください。(解除は随時可能です) 

 

メールアドレス(必須)


名前(必須)

 

 

 
メールアドレス(必須)


名前(必須)

 

 

お問い合わせ

 営業時間/9:00-17:00
(土日祝除く)