No.463弱いビジネス。考えるべきは事業モデルの変革か、それとも、他分野での新規事業か

№463:弱いビジネス。考えるべきは事業モデルの変革か、それとも、他分野での新規事業か。

この日は、オンラインでの相談です。
モニターの向こうに、疲れた顔をしたN社長がいます。
「先生、この分野で年商10億円は無理ですよ。」
 
この時のN社は、ネット通販で年商1.6億円。
特殊な商材を扱っており粗利率は高いものの、広告費・送料・手数料にその利益を喰われています。4年間この規模で停滞をしています。
 
週明けで忙しいためか、社員がN社長にお伺いに来て2度目の中断がありました。
N社長は、やれやれという顔で席に座り言いました。
「先生、全く今とは違う分野で新規事業を考えています。」


ビジネスで儲かるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
これは絶対です。
 
一つは、「顧客から必要とされること」です。
 
その顧客は何かしらで困っている、または、ある強い欲求を持っています。
そのサービスを紹介すると、「これは助かるね」、「欲しいね」と感想を言ってくれます。
 
このように、そのサービスが「誰かに刺さっていること」が絶対です。
刺さっているから、興味を引くことも、売ることもできるのです。
 
そして、もう一つの条件が「他者と比べられ、選ばれること」になります。
 
探しても他に見つけることができません、または、見込客がこのサービスが一番良いと判断しました。この状態にあるからこそ高く売ることができます。
 
この2つです。
「顧客から必要とされていること」と「他者と比べられ、選ばれること」です。
この2つが揃った時に、「儲けること」ができるのです。
 
顧客から必要とされていなければ話になりません。
顧客から必要とされたとしても、他にいくらでもあれば儲かりません。
 
それは、「水」のようなものになります。
水は無くてはならないものですが、ありふれているものです。それでは、高い値決めはできないのです。そこは、我々中小企業が勝てる市場ではありません。
 
必要性が低く、ありふれたものに、喜んで金を払う人はいません。
必要性が高く、他にないから、喜んで金を払うのです。
 
この条件をなんとしても満たす必要があるのです。これが儲かる商売の原則です。


この条件を私は、冒頭のN社長に伝えました。
「顧客から必要とされていますか?」、「他にありませんか?(他より優れていますか?)」
 
N社長は、少し考え、素直に答えました。
「顧客から必要とされているとは思いますが、他者からでもそれは買えてしまいます。」
 
「物を扱う通販」という事業のサダメです。
商品名やコードで検索をされ、値段で判断をされてしまうのです。そして、その顧客はまたより安い先を探すのです。
 
私は、厳しいことを言わなければなりません。
「この御社のサイトが、顧客から必要とされているとも思えません。」
 
顧客は「物」を買っています。物を必要としているのです。
この「N社のサイト」を必要としているわけではありません。N社のサイトでなければだめだという理由は何も無いのです。
 
モニターの向こうのN社長の体が、更に縮まります。
しかし、N社長の目には、まだ力がありました。
 
私は、第1回目のコンサルティングに向けての宿題を出させていただきました。
「事業のアイディアを10個出してください。」
 
このままの事業モデルで儲かるはずがないのです。N社の事業モデルを大きく変える必要があります。「顧客に必要とされること」と「他者より選ばれること」、この条件を満たす必要があります。
 
そして、N社長は「大きくしたい」、「年商10億に行きたい」と言われました。
そうであれば、この2つだけでは不十分です。
 
「儲かる事業の条件」と「大きくなる事業」の条件は、イコールではありません。
2つの条件に、更に条件を追加する必要があります。
 
私は、その中の特にN社長に必要となる3つの条件(視点)をお伝えさせていただきました。
「手間と単価があっていること」、「クリエイティヴが無いこと」、「市場があること」。
 
N社長は、自信なさげに言いました。
「先生、そんな事業モデルが見つかるものでしょうか。いままでも散々考えてきました。」
私は、ゆっくり頷き、「はい、頑張ってください。」と答えました。
 
次回の日程と東京で行うことを確認すると、N社長は思い出したように訊きました。
「先生、新規事業の件はどうしましょうか?」
私は「その10個の中に入れておいてください。」と答え、オンラインを閉じました。
 
 
コンサルティングの第1回、そこには、しっかりオーラをまとったN社長がいます。
オンラインだからそれが感じられなかったのか、それとも、N社長の心情に何か大きな変化があったのか。
 
N社長は、1枚の紙を矢田に差し出します。
そこには、10個のアイディアと、その条件に照らし合わせて〇×△の評価が書かれています。
 
私は、一つ一つ聞くことをやめ、訊きました。
「どれがいいですか?」
 
N社長は即答します。
「一番上のものです。」
そして、その理由を続けられます。
「そのような案件を、過去に数件やったことがあります。単価もよく、クリエイティヴもありません。そして、競合も調べましたが強いところはありません。」
 
『創造』の瞬間です。N社長は、新しい市場を創り出したのです。
1時間ほどのディスカッションを行いました。
 
こんなことを求める人がいるのだ、こんな古い分野にこんな市場が残っていたのだ、
大いなる発見に立ち会えることは、何よりもうれしく、興奮することです。
 
N社長と私は、この後の動きを確認しました。
市場のニーズを更に確認すること、リスクを抑えて事業を立ち上げる手順など。
 
当然、このアイディアがスムーズに形になるか、本当に次の事業になるかはわかりません。
しかし、少なくとも、条件を満たしている、いや、満たしていそうなものは見つかったのです。見つかれば行動できるのです。行動すれば必ず開けるのです。
 
そして、それ以上に、N社長の思考は変わり始めているのです。
儲かるビジネスをつくる視点、大きくなるビジネスに変える思考を持ち始めているのです。
この1カ月で、大きく変化しているのです。
 
N社長は、「はい、すぐに動きます。」と返しました。
 
最後に、私は思い出しN社長に訊きました。
「新規事業のアイディアもお聞きましょうか?」
N社長、頭を掻きながら答えます。
「いえ、いいです。この分野が好きなので。」
(笑)
 
私は、N社長の笑顔をみて、次のことを言うのを止めました。
・隣の芝生は青く見えるもの。どんな市場も激しい戦いがある。
そして、
・新規事業の芽は、必ず自社の今やっていることの中にある。そこで長く頑張ってきた者にしか見えない、気づけない市場が絶対にある。
・創り出すことを諦めてはいけない。必ず道は開かれるものである。

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