No.149:マニュアルを作ったけど、更新されない。・・・マニュアル導入で失敗する会社に、絶対的に欠ける視点とは?

コラム№149

「矢田先生、あのマニュアルを、まだ使用していますよ。」
 
学習塾F社長との定期的な会食の際の言葉です。
お手伝いさせて頂いた時から、5年が経過しています。
 
「ありがとうございます、それは嬉しいことです。」
 
F社長、顔を困った表情に変え、言われます。
 
「言葉の通りで、実は困っています。いまだに、あのマニュアルを使用しています。あのマニュアルをです。」


マニュアルをつくるメリットはいくつかあります。
・ノウハウを見える様にする
・ノウハウを全員で共有する
・テキストとして使用できる
・会社の財産(ナレッジ)として残す など
 
私は、常々、「マニュアル無しでは、経営はできない」、「マニュアルを作らないのであれば、組織とは言えない」とお伝えしています。
マニュアルとは、それだけ効果も大きく重要なものなのです。
 
しかし、このマニュアルに関する多くの課題があるのも事実です。
「どれが最新であるのかが解らない」
「どこにあるのかが解らない」
「作成したはいいが、実際にその通りやられていない」
そして
「マニュアルが更新されない」
 
マニュアルと言うと、すぐにその作成方法や書式を考えてしまいますが、本当の問題は、その「運用」にあります。
 
冒頭のF社では、全くマニュアルが更新されていません。
5年間、更新することなくそのまま使い続けていたのです。
それはそれで、ノウハウが継承されたわけですから、おおいにその役目を担ってきたと言えます。
しかし、それ以降に得たノウハウは、会社に残されていないのです。
または、現場ではマニュアルに即していないことがされていることも予測されます。
 
F社の当時、A君という非常に優秀な20代後半の社員が、マニュアルを作成しました。
「授業の組立の仕方」、「講師の声の出し方」、「黒板の使い方」など。
作成されたマニュアルを拝見すると、私の胸も熱くなったことを覚えています。
そのマニュアルには、「子供の成績を上げる」「子供の人生を変える」という情熱と、プロフェッショナルだけが持つ視点が盛り込まれています。
どんな親も、このマニュアルを読めば、自分の子をお願いしたくなるはず、それほどの出来でした。
そのマニュアル一式と訓練制度をつくり、私はF社のコンサルティングを終えました。
 
 
F社長とは、その後も懇意にさせて頂いていました。一年に一、二回のペースでご馳走になっておりました。
その時にF社長の口から出た言葉です。
「あの後、作成されたマニュアルと訓練制度を活用することで、講師の質は格段に良くなりました。また、訓練の期間も大幅に短縮することができました。」
採用した社員が、講師として生徒の前に立つまでに育つのに、3週間とすることができました。
 
F社長が続けられます。
「しかし、先日発覚しました。当時作成されたマニュアルが、全く更新もされずに使用されています。こんなことがありえますか?これでは、うちの会社は成長していないことになります。」
 
このようなケースは、多くの会社で起きていることです。
・マニュアルをコンサルタントに依頼して作成してもらった。
・社長自らがマニュアルを作成した。
・同業他社のマニュアルを手に入れて、その多くを真似た。
 
その瞬間ではいいのですが、このような導入のされ方をすると、必ず更新がされなくなります。
社員は、そのマニュアルを、正しく「指示書」として認識し、「神聖化」してしまうのです。
 
F社でも、A君という超優秀な社員が、素晴らし過ぎるマニュアルを作成したために、誰も手を付けられなくなったのです。
そして、そのA君は、その後一年もしないうちに、会社を退職しました。
 
マニュアルをつくることは、どんな会社も取り組みます。その作成は、時間をかければ絶対にできます。
しかし、本当に必要なのは、マニュアルの『運用』にあるのです。
多くの企業は、マニュアルの運用で失敗しているのです。


正しく認識する必要があります。
マニュアルをつくるのが目的ではありません。ましてや素晴らしいマニュアルでもありません。
マニュアルを運営し、その時々に得たナレッジを、会社に残していく、
その成長のサイクルを得ることこそが目的なのです。
だから、『マニュアルという仕組み』を導入するのです。
 
私は、コンサルティングの場で、マニュアルのフォームをデータでお渡しすることは有りません。
マニュアルのサンプル集をお渡し、必要な構成要素をご説明させていただき、「自社」で作成を進めて頂きます。
これは、私の提供したマニュアルのフォームが「神聖化」するのを避けるためです。
コンサルタントの先生からもらったフォームでは、それが「最高なもの」となり、誰もいじらなくなります。
マニュアルに書かれた内容を変える、以上に、そのマニュアルのフォームを改善し続ける組織を作らなければいけません。
 
F社は、その発覚から、マニュアルの更新の仕組み、 成長するサイクルづくりに取り掛かりました。
今、さらに5年が経過しています。
 
いま、しっかりそのサイクルが根付いています。各店舗(塾)では、スタッフがマニュアルを使って打ち合わせをしている姿が見られるようになりました。
そして、定期的にそのマニュアルを、本部が集め更新しています。また、業務の改善イコール マニュアルの改定という形で、改善の提案が上がるのが普通になりました。
その結果、18店舗全部で、最新のナレッジが共有されています。
 
マニュアルを目的にしてはいけません、
マニュアルにより、成長のサイクルをつくることが目的です。
そう目的を捉えた時、最初に手を付けるマニュアルは、自ずと「マニュアルの運用マニュアル」になるはずです。

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