No.178:多くの上場企業の歴史を観ると、1行目の創業から2行目までが10年20年あります。そこから解る、飛躍を手にする社長の信念とは!?。

コラム№178

「矢田先生、ここまで15年かかりました。」
 
当社事務所にご相談に来られたS社長の言葉です。
 
創業して今日まで15年、
現在、年商4億、社員数20名になっています。
 
S社長、ゆっくりと言葉を繰り返されます。
「やっとここまでです。15年かかってここまでですよ。」
 
私は、S社長をお迎えした時の言葉を再度述べ、頭を下げました。
 
「よくおいでいただきました。」


多くの上場企業の沿革(創業から現在までの歴史)を確認すると、共通する点があります。
 
それは、一行目から二行目が「長い」ということです。
一行目から二行目の期間が、10年20年ある企業が「普通」という状態です。
 
N造船会社をみると、
一行目が「1911年 創業」、そして2行目が「1931年 株式会社に改組」とあります。この間、20年が経っています。
 
S薬局チェーンをみると
「1976年 創業」、「1992年 初の大型店舗」とあります。
現在の大型薬局店の事業モデルに着手するまで16年です。
 
T技術サービスは、「1959年 事業開始」、2行目が「1997年 〇〇の子会社として現当社設立」とあります。
2行目まで38年です。
 
そして、その沿革は、近年になるほど、毎年何かが記載されている状態になります。〇〇年 配送センター設立、〇〇年 100店舗達成 など。
その記載は、特に上場前あたりから急激に増え、加速していくのが解ります。
 
 
今は大企業でも、多くの会社はこのような、経過を辿っています。
多くの大企業も、創業からの10年20年の間、ただの中小企業として過ごす期間がありました。
 
この期間に、自力をつけていきます。
「これだというビジネスモデルの発見」があります。それまでは、何とか食い繋ぐために必死で頑張ります。このころの会社の目的は「生き残る」ことです。
そんな毎日でも、飛躍する事業のアイディアを考え続けます。そして、やってみます。その時期は、資本も乏しいため、一つの投資が大きいのですが、試してみます。その多くは、成果ではなく「経験」になります。
朧気ながら「事業」というものが解ってきます。
 
また、経営者としての能力を高めることになります。信念を持つようになります。
自分のお金で人を雇ってみて、初めて「社員」という者の本質が解ります。
そして、その中で、組織の動かし方、仕組みの考え方を身に付けていきます。
その毎日も試行錯誤の連続です。
 
そんな10年、20年を過ごしているのです。
その結果、飛躍の時を迎えることができます。その飛躍は、ドラスティックではありません。社長の頭の中の変化、そして、社長の周囲の変化として、少しずつ変化が進みます。
 
しかし、今までの長い会社の歴史からみると、その1年2年は、ドラスティックと表現できる時期となっています。
 
 
創業から10年、20年はかかるものなのです。
それは、無駄な時間ではありません。その時間があったからこそ、今があるのです。そして、その時間があったからこそ、次の飛躍に向けて確信をもって行動ができるのです。
また、その時間があったからこそ、次の飛躍には、何が必要なのかが解るのです。
 
冒頭のS社長には、いままでのご自身の経験があったからこそ、自社の課題が何か、そして、何が必要であるのかが解ったのです。
そんなタイミングで、私の書籍を読んでいただけました。
 
これが、今までの経験が無いようであれば、何も響くものはないのです。
現に、当社に来られるお客様に、「創業したばかりの方」や「大手の経営者」はいません。そんな方々には、響くものはないのです。
必死にそこに身を置いて、自身で四苦八苦されている方だけに本当の意味で理解ができるのです。感じることができます。
 
そして、今までの経験があるからこそ、「人の力を借りる」という判断ができます。人の力を借りるためには、自分自身に「力」が必要です。
自分の中に核があるからこそ、人の話や自分と異なる考え方を受け入れることができるのです。そして、変化することができるのです。
自分に力がない、自分に核がない状態では、人の力を借りることはできません。
 
私はこの言葉を口にせずにはいられませんでした。
「よくおいでいただけました。」


創業後からの10年20年は、良いことは試してみる、そして、良いなら残し、ダメなら捨てるという繰り返しになります。
うまくいったものを残し、多くを捨てることになります。
 
それを繰り返したのちに、成功とも言えるほどの名声を得ることになるのです。
上場、年商10億、20億、、、そんな多くの経営者に共通して言えることは、「スピードある判断、スピードある実行」です。
この要素こそ、名声を得た社長全員に共通する唯一つのものと言えます。
 
さっさと試して、さっさと答えを得る。
彼らは、早く答えがほしいのです、さっさと試すことを選びます。
「さっさと正解がほしい」とも当然思っています、誰も失敗するために頑張っているわけではありません。
それ以上に、「さっさと良いか悪いか、当たっているか間違っているか」を知りたいのです。答えが出れば、すぐに次に行けます。
 
「将来を見据える力がある」、「カリスマ性がある」、
これらの要素は、そんな多くの経営者にもありません。共通項目どころか、全員が、これらは自分には無いと断言する方ばかりです。
 
彼らが持ち得るものは、「変化することに対する強い欲求」です。
絶えず事業に良いもの、会社を飛躍させるものを探し求めます。
そして、良いと感じたものに、噛みついてみます。
 
そんな社長の姿を見て、周囲の人たちは「変わり者」と言うでしょう。
身内や社員からは、「また社長が馬鹿な買い物を・・・」と呆れ顔でみられています。
その姿は、まさにある意味「異常」です。
その絶えず何かを求め、彷徨い続ける姿は、「餓えた」状態にも観えます。
 
 
その社長の持つ「変化に対する欲求」は、「成長意欲」とも「探求心」とも表現できます。
 
その欲求は、あまりに強く、「現状維持に対する嫌悪感」という表現のほうが適切かもしれません。「安定」や「自分が満たされる」という状態や、その思いが自分の中に生まれることが、嫌で嫌でたまらないのです。
 
その欲求と嫌悪感に突き動かされるように、次々に挑戦します。その多くを『経験』としていきます。彼らは、その経験を、絶対に「失敗した」とは言いません。かわりに「勉強になった」と表現します。


創業から今までの10年20年は、次のステージへの飛躍のための修練の期間です。沿革における一行と二行の間に当たります。
この二行で20年です。
 
これから飛躍の時が始まります。
沿革のこれ以降には、1年刻みで何かが記録に残されることになります。
 
そのためにも、社長が持つ「変化に対する強い欲求」を、組織のものにする必要があります。
今までは、社長のその欲求こそが、会社の原動力であり、会社の変化のトリガー(誘因)でした。それにより、会社として、成長を続けてきました。
 
しかし、それではこれからは立ち行かなくなります。
社員が100名、200名と、どんどん増えてきます。
事業を取り巻く環境も、どんどん変わってきます。
社会的な責任も大きくなってきます。
 
そのため、分業をすることになります。売る仕組みは営業部に、新サービスや新製品は開発部に、制作や外注の管理をする部、そして、法律や財務を担う部も必要です。
そして、その各部には、これまで以上のスピードで変化、成長をしてもらわなければなりません。各部でトリガーを引いてもらわなければいけません。
 
 
そのために、社長の「変化に対する強い欲求」を、組織に注入することが必要なのです。
それができないと、各部が、自分たちで変化しない、社長の指示がないと止まる状態になります。決められたことを決められた通りにこなすだけ。
これらの部門では、自分たちで課題解決も仕組みを改善することもしません。
 
それこそ、社長が最も嫌悪感を抱く「現状維持」という要素を会社という体内に持つことになります。普段の業務に改善意識を持たない社員、新しいことに対し好奇心を持たない幹部と、建設的な議論は成り立ちません。そんな時間も会社も、嫌で嫌でたまらないのです。
 
 
社長自身と同じように、成長する強い欲求を持った組織をつくらねばなりません。
それにより、初めて年商10億20億とこの先も成長を続けることができます。
 
会社の沿革の一行目から二行目は、社長の力であり、社長の歴史です。
これからの二十行、三十行は、組織の力であり、会社の歴史になります。
 
創業15年、本当のスタートです。

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