No.273:海外進出して成功する社長と失敗する社長の差は何か。そこに見る、事業の原則、経営者の役目とは。

№273:海外進出して成功する社長と失敗する社長の差は何か。そこに見る、事業の原則、経営者の役目とは。

ベトナム、ホーチミンシティ。
 
その店は、富裕層の住む街にありました。店の前の住宅価格は、日本円で5千万。この通りに、市街地の騒々しさはありません。
 
N社は、同様のパッケージを十数店舗展開しています。この国での上場の計画を持っています。
 
同行した日本人経営者が訊きます。
「海外で成功するために、一番必要なことは何ですか?」
 
N社長は少し困った様子です。
「それについては、私には解りません。しかし、この国については、少しは解っているつもりです。」


その国がどのステージにあるのかを考えることが必要です。「成長社会」か「成熟社会」か。
 
成長社会とは、「モノやサービスがまだ行き渡っていない社会」です。
そのため、企業は、「いかに早く、いかに大量に」の戦いをすることになります。
多くの企業が現れますが、その経済の拡大にのって、その多くが恩恵を受けることになります。消費者には、選択権は少ないため、品質にもうるさくありません。
 
それに対し、成熟社会とは、「モノやサービスが行き渡った社会」です。
成長社会で売れたエアコンも車も、成熟社会では売れなくなります。モノが溢れ、消費者優位の状態になります。その結果、サービスの品質やマーケティングの戦いに移行します。
 
この時に、成長社会同様に、「より大量に」を続けた企業は、価格競争に陥ることになります。この時には、『特色』が必要になります。
 
その国がどのステージあるのかを、見極めることが必要になります。成長社会か、成熟社会か、それによって自社の事業を変えることになります。
 
日本は、成熟社会。
タイ(バンコク)も、ほぼ成熟社会。(まだ残っている)
ベトナムは、いま勢い真っ盛りの成長社会。
ミャンマーは、成長社会の入り口。
このステージを観て、事業を考えることになります。
 
また、市場でも同様に考えることができます。成熟しきった日本の中にも、成長する業界は当然あります。
パソコン、美容院、システム、建設業、多くの産業は、成熟社会。それに対し、ドローン、バイオ、AIなどは、市場全体は拡大することになります。
 
自社の事業が、どちらの「市場」にあるのか、それを正しく見極めることが必要です。また、自社の資源(金)の大きさも考えることになります。そして、その上で、どの市場を取りに行くのか、社長としての決断を下すことになります。
 
その社長の意思決定が当たれば、自社は繁栄することになります。逆に、外せば、繁栄することはありません。いつまでも、厳しい状況に留まることとなります。
 
それが、商売の原則です。市場を創り、市場を取るのです。
商売の原則は、変わらないのです。変わるのは、市場や環境です。


海外ビジネスで、成功するために、必要なものは何か。
人脈、人材確保、法律・・・など。
 
どれもが必要ではありますが、絶対ではありません。絶対に必要になるのは、やはり「事業モデル」となります。事業モデルが悪ければ、人脈や人材が有っても成果を上げることはできません。売上げも、シェアも、得ることはできません。
 
当たる「事業モデル」が見つけられるかどうかが、その成否を分けることになります。これは原則です。
 
その国(市場)にとって、そのサービスが必要であれば、当然、伸びることになります。逆に、その国(市場)が必要としなければ、伸びることはありません。
志向や文化的なもの、そして、その「時代」に合わなければ、全くダメになります。
 
我々は、その国がどのように変化していくのかを読み、事業を『準備』します。
その社会に先回りして、市場を取りに行きます。この時に、注意しなければならないのは、欲張らないことです。大きな市場を狙ってはいけません。それでは、大手との戦いになります。そして、必ず来る成熟社会には何も残らないことになります。
 
私たちは、その国の人からすれば、「未来」から来た人になります。いまのその社会に何が欠けているのか。そして、これから何が必要になっていくのか、がある程度は予測できます。そして、それを解決するためのサービスの存在を知っています。当然困難は伴いますが、かなり優位な立場にあることは間違いありません。
 
ベトナム、ラオス、ミャンマー、それらの国は、すごいスピードで成長社会を駆け抜けることになります。我々は、それに先回りをして事業を構築します。そして、ある分野での市場シェアを取りにいきます。
 
間違っても、大きな市場を狙ってはいけません。成長社会は一瞬で過ぎていきます。また、世界中の大手がものすごい資本を投じてきます。小さな市場でシェアナンバーワンを狙うのです。それがやりやすいというのが「海外」というだけです。
 
海外ビジネスにおいて成功するためには、事業をデザインする能力が必要です。社会の動きを読み、そこに先回りをして市場、すなわちビジネスを築いてきます。そして、経済の成長に合わせ、そのシェアをガチガチに取りに行きます。
 
その発想、その視点、その能力を持つ社長が成功することになります。
海外において成功する社長には、その能力があります。
逆に、その能力がなければ、ダメなのです。未来が予測できる、まだシェアを取られていない、という優位性を活かせないのです。


冒頭のN社長は、ベトナムという国を理解していました。そこに長く住み、ベトナムの変化を感じました。そして、先を行っているアジアの他の国々の観察を続けました。
 
その結果、いま、一つのパッケージで、十数店舗展開しています。その店には、お金を持ったベトナム人がやってきます。彼らは、喜んで金を使っていきます。毎年給与は上がっています。そのため、稼いだ分だけ使います。
 
そんな中間層に向けたビジネスです。店舗では、ある分野に絞った商品を提供しています。そして、日本人であることを活かした仕入れをしています。
間違いなく、その分野では、競合はいません。そして、同様の地域(裕福層の住む)が増えるのに合わせ、出店を進めています。
 
数年で、数百店舗を計画しています。資金調達と信頼獲得のために、上場を計画しています。そして、スピードを買うためにFC展開を考えています。また、ラオス、ミャンマーへの次の展開も考えています。
 
N社長は、この国がどのように変わっていくのかを読んでいます。そのために、毎日を使っています。たまに、店にでます。若いスタッフとも食事をします。顧客にお願いをして、家の中も見せてもらいます。
 
 
海外には、チャンスが沢山あると言われています。それを正確に表現すると次のようになります。「まだ、無いモノがいっぱいある」と。
そして、我々には先進国としての「経験」と「金」があります。
その状態をチャンスと表現をしているのです。
 
経済の発展は、多くの成功者を生むことになります。その人達は、その能力に長けた人と言えます。
逆に、そこでも失敗する人は出ます。また、その経済発展のおこぼれを得ている程度の成功の人達も沢山います。そして、その国が成熟期に入った時に、より多くの人(企業)が淘汰されることになります。
 
バンコクは、その時代に入りました。モノやサービスで溢れています。サービスの高度化と、価格やマーケティングの競争が激化しています。そして、特色のない事業が潰れていっています。
 
 
成功する人には、事業家としての能力があります。そんな人は、海外でより大きく成功を収めることになります。
失敗する人には、その能力がありません。海外でも、同様の失敗を犯します。「市場を読めていません。」、「職人型のビジネス」、「特色が無い」、「シェアを取りに行っていない」、「いろいろやり過ぎ」、「単価が小さい」・・・
 
成長社会に行けば、誰でもそこそこ儲けることはできます。しかし、そこで大きくなるかどうかは別の話です。そして、その国に残り、事業を永続させられるかどうかは違うのです。
結局は、社長の能力の問題なのです。どうやって儲けるか、どうやって大きくするか、どうやって市場を牛耳るか、社長のデザイン(設計)能力が問われているのです。

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