No.281:優秀な社員がいても業績が上がらない会社がある。頑張りどころを間違えている。品質、効率、人材に取り組んではダメ。

№281:優秀な社員がいても業績が上がらない会社がある。頑張りどころを間違えている。品質、効率、人材に取り組んではダメ。

「どのような人を採用すればいいのでしょうか。」
 
S社は、年商5億円。業界向けのサービスを展開しています。この半年で、自信を持って展開できるサービスができました。
 
私は、S社長の次の言葉を待ちます。
「昨年の秋に採用した営業担当の育ちが遅いのです。なかなか独り立ちさせることができません。」
 
私は、その基準を得るために、これから取り組むことを全てご説明しました。
S社長、「遠いですね。」と言い、再度「本当に、遠いですね。」と言うのです。


自社に必要なのは『逸品』です。
それも唯一つの逸品です。一品の逸品です。
優れたサービス、他社にはない商品が必要です。
 
その一つのものは、ユーザーの間で評判です。「あの会社のサービスはすごい」、「あれを導入すれば、すごい効率が良くなる」、「あの店が、一番良い」。
 
この一つを見つけることが必要です。創業期には多くの種類の顧客と多くの種類のサービスを持ちます。その中から、「自社にしかないもの」、「お客様が喜んで金を払うもの」を見つけます。
 
創業期は、その一つを見つけるための期間と言えます。そういう意味では、世の法人380万社のうち90%以上が、創業期にあると言えます。
 
一つの逸品を見つけた時に、創業期を終え、成長期に移ることができます。世の多くの成長企業同様に、その一つで駆け上がっていけます。
 
逸品を所有する段階に入ると、『量産を担当する社員』を採用することができます。その社員は、決まったものを、決まった通りに行動して、売っていきます。成果がでるため社員のモチベーションを高い状態で保てます。短期間で稼いでくれるため、会社としても成長のサイクルをどんどん回すことができます。
 
 
創業期には、絶対に間違えてはいけません。
「いまは、その一つを見つけるために頑張っている」ということ。そのために、日々作業をしているのです。また、いろいろな広告を試しているのです。忍ぶ時なのです。
 
この時に、その目的を忘れ、「昨年対比10%、20%の売上げの伸び」を追えばたちまち、多忙な毎日に見舞われることになります。特色が無いために、クリエイティヴな企画や細やかな対応を売りにすることになります。または、社長営業や訪問回数という人間関係に頼ろうとします。多くの社員は、活躍できなくなります。その結果、社員一人あたり700万円という生産性の低い状態に陥ります。
 
そして、更に間違った方向に頑張ってしまう人がいます。事業としての力を入れる方向を間違えるのです。次の3つがその典型とも言えるパターンとなります。そして、この順で、『深刻さ』が増すのです。
 
1.更に「モノ」を高めようとします。
もっと美味いものを作ろう、もっと良いものを提供しようと頑張ります。しかし、それで売上げが増えることも、自社の成長を押し上げることもありません。
売上げが増えない理由は、品質に問題があるからではありません。それが「外れている」からなのです。企画の問題なのです。
 
2.「効率良く(原価を下げる)」を求めます。
そのサービスを効率良く提供でき、すこし時間が空きました。原価を下げることで、儲けが大きくなりました。しかし、それでは根本的な解決にはなりません。それらはあくまでも『内部』の話です。外へのインパクトは何も変わっていないのです。その空いた時間に、また「案件」を入れるだけになります。
 
3.もっと「社員の能力」を高めようとします。
社員の能力を高めるため、社員の意識を変えるために、社内勉強会や講師を招いての研修を行います。これで、成果が出ることはありません。事業自体が弱いのです。この取組みは、会社の飛躍とは、先の二つよりも更に遠いものになります。
 
例えです。
A県には名産とも呼べるお菓子があります。観光客の多くが、その菓子を買っていきます。そのお菓子を複数の会社が作っています。その中の1社が7割のシェアを持っています。
 
そこで考えるべきことは、『市場を創る』こととなります。
「このお菓子の超豪華版を作る(高価格帯を押さえる)」
「中国人向けの商品を開発する。彼らにウケる味、分量、パッケージにする。そして、広告をかけ、中国人内でのナンバー1を取りに行く。」
「この地域では、洋菓子分野に強いお土産が無い。そのポジションを取りにいく。」
 
努力の方向性を間違えると、いまの菓子の味を更に美味しくしようとします。または、生産の効率を高めようとします。その取組みによって、売上げが伸びることはありません。それどころか、シェア一番の会社にジリジリと押されることになります。
 
努力の方向性を間違えてはいけません。間違えれば、その努力はいつまでも報われなくなります。多くの社員の能力も頑張りも成果には繋がらなくなります。
多くの会社の根本的な問題は、事業モデルにあるのです。一品の逸品が無いことなのです。


一つの逸品を見つけることが出来ました。
・そのカタログを見込客に見せれば、興味を持ってくれます。
・実際に使用すると、お客様の多くはそのサービスを手放せなくなります。
 
この段階まで来ることができたら、社員でも売ることができます。顧客も商品も限定されているために、優秀な人で無くても提供することができます。いよいよ展開に移ることができます。
 
冒頭のS社は、創業して20年が経っています。S社長の顔には、自社のサービスを早くお客様に届けたいという思いが溢れています。そこで、冒頭の言葉が出ました。
「矢田先生、営業にはどのような社員を採用すればいいでしょうか。」
 
矢田は、社長にお伝えしました。「もう少しお待ちください。まだ、やるべきことが残っています。」私は、これから取り組むことを説明しました。S社長は、それを聞いて感想を言われます。「遠いですね」。
 
次は、集客の仕組みを作る必要があります。営業担当の役目は、あくまでも販売です。集客は、仕組みでせねばなりません。
「営業担当をどんどん増し、どんどん売上げを増やすため」には、繰り返し使える集客の仕組みが必要になります。
 
集客の仕組みができると、販売の仕組みを作ります。1回目の訪問で何をするのか、2回目では何をゴールとするのか、を設計します。その時に使用するカタログや提案書、そして、ヒアリングシートも整備します。そして、それの使い方を説明したマニュアルを作成します。
 
次は、それを管理する仕組みが必要になります。チームで動くためには、案件の進捗がお互いに解るようにしなければなりません。顧客の要望などの情報も、一元管理する必要があります。管理者がメンバーの動きや案件の進捗を管理できるような仕組みを整備します。
 
 
ここまで来ると、『営業担当者に何が必要になるか』が見えてきます。最低限必要になる知識は何か?どのようなスキルが必要になるか?そして、どのような人間的な素養が必要か?
 
必要となる知識やスキルを補完するために、訓練プログラムを整備します。当社の訓練プログラムに乗れば、確実にそれらを身に付けることができます。会社では変えられないもの、すなわち人間的な素養の有無を採用基準とします。
 
S社長は言われました。
「当社のお客様は、大手企業ばかりです。そして、当社のサービスは、その会社にとって非常に重要なものとなります。」
 
営業担当に求める素養を一つひとつあげていきました。
真面目である、人としての落ち着きがある、誠実さを感じられる、そして、コミュニケーションが取れる。
また、大手にいた、または、大手との取引の経験があること。
 
ここまで出来て、「どんな人を求めるか」の議論ができるのです。その基準は、自ずと明確になってきます。そして、その人に向けた明確な求人メッセージを発信することができます。すると、狙った通りの人が採用できます。
 
そして、その後は、その人は仕組みに乗り、成果を出せるようになります。その時には、生産性も1千万円を軽く越えることになります。
 
ここまでが出来ていないと、「どのような人を採用するか」の議論はできません。その基準は、曖昧になります。そして、その求人メッセージもばらけたものになります。選考の基準も曖昧です。「優秀な人がほしい」と全く的外れなものになります。
 
そして、当然、採用された人は、なかなか仕事を覚えることができません。戦力化の手間も期間も大きいのです。その結果、社員はやる気を失くすことになります。
 
採用した人が仕事を覚えた頃に退職する、という現象が繰り返し起きます。その結果、社内には、「50代60代のベテラン数名」と、「入社数年の人が多数」という状態になります。生産性も低いので、給与で引き止めることもできません。
 
私は、S社の事業モデルを年商50億円に行けるものだと見ています。それも、10年以内に。海外にも展開できるものとも考えています。だからこそ、頑張るべき方向性を間違えずに、最速で進んでほしいと考えています。
 
 
まとめです。
 
御社に必要なものは、一品の逸品です。
それが見つかった後には、集客の仕組み、販売の仕組み、量産の仕組み、そして、管理の仕組みを作っていきます。
そして、訓練の仕組みをつくり、採用の仕組みを作ります。
 
やるべきことも、その順番も、明確です。これ以外ありません。
 
その根底に必要となるのが、「遠いところから考える」ということに向かう、社長の覚悟となります。
近いところは社員に任せ、社長は社長の役目を全うするのです。
遠くてもやるしかないのです。

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