No.282外注業者への支払額。社員の給与。そして、社長の報酬。そこにある根本的な基準とは。

№282:外注業者への支払額。社員の給与。そして、社長の報酬。そこにある根本的な基準とは。

「矢田先生、これを見てください。」
F社長は、事業モデルの変革に取り組んでいます。そのテストのための第一案のチラシが出来てきました。
 
そのF社長の口調からは、不満が伝わってきます。
矢田は、チラシの企画書と、その案を見比べます。
「良いデザイナーですね。」と言い、「いくらですか?」と訊きました。
 
F社長は答えます。「〇万円です。」
 
「本当に良いデザイナーですね。」


世の中の報酬には、基準があります。
その基準に応じて、報酬の多い少ないが決定されます。すべてのビジネス、すべての人が、その基準に従って、それ相応の報酬を得ています。
 
報酬の基準は、担うものに「答えが存在するか、しないか」によります。
「答えが無いところに、答えを創る人」が、大きな報酬を得ることになります。逆に、「答えが有るものを、その通りに造る人」は、小さな報酬となります。
 
前者の『答えを創る』ためには、創造力が必要です。そして、それ以上に「なんとしても生み出す」という覚悟が必要になります。また、その結果に対し、「すべて自分が責任を持つ」という覚悟です。
 
答えが生まれるかどうかは、何も保証がありません。そして、その答えが、実際の成果に結びつくかはその段階では全く解らないのです。
 
『答えを創る』とは、ハイリスク・ハイリターンであると言えます。
その答えが、実際に成果に結びつけば、大きな賞賛を得ることができます。逆に、成果が出なければ、「馬鹿者」、「やっぱりできない」、「時間の無駄だった」と酷評を受けることになります。
 
後者である、「答えが有るものを、その通りに造る人」は、ローリスク・ローリターンだと言えます。その人は、「誰かが生み出した答えの下で、動く人」だと言えます。
 
「答え通りに造る人」は、体を動かした分だけ、成果を出すことができます。それは、創造ではなく、作業に近くなります。そして、その成果に対し、本当の意味で自分が責任を負うこともありません。その責任は、「答えを創った人」にあります。求められるのは、勤勉に体を動かすことです。
 
そして、人から酷評を受けるリスクもありません。その結果として、報酬は低くなります。
 
政治家、経営者、著者、映画監督、研究者、デザイナー、多くのリーダー。
私たちの世は、「創る人」に大きな報酬、または、酷評を与えます。
そして、「造る人」に対しては、小さな報酬、OR、叱責を与えます。


この法則は、ビジネスや組織の中にも適用されます。
 
世に無いビジネスを創り出した会社が儲かります。世に無いだけに、社会への貢献は大きいものとなります。他社が創れない、または、実現の可能性が低いだけに、その会社は、儲かることになります。
 
逆に、世の中に答えがある、すなわち、ありふれたビジネスであれば、儲かることはありません。それは、すでに世の中に答えがあるものです。それを、いくら「安く」「大量」に造っても、儲かるはずはないのです。
 
ビジネスを創れば儲かります。ビジネスを造っていては儲からないのです。
 
例えて言えば、ビルディング。
ビルディングを企画する会社、すなわち、オーナーが一番儲かることになります。
そして、それをデザインする人も儲かります。そして、次にその施工を工夫して行う会社が儲かります。その下で、作業をする会社は、人工代程度になります。
 
オーナーやデザイナーは、ゼロから考えます。
施工を請け負うゼネコンには、設計図面があります。
作業をする会社には、具体的な作業指示があります。
 
上に行くほど、儲かります。それは、生み出すこと、すなわち、創造が必要になるからです。そして、その分、リスクも大きくなります。逆に、下に行くほど、儲からなくなります。与えられた答え通りに動けば良いのです。その分、リスクは小さくなります。
 
そして、人数にも相関性が生まれます。上にいくほど、少人数になります。数名で企画やデザインがされます。施工管理は十数名います。そして、作業員は、数百名います。
 
創造的な働きをする極少数の人の下で、より多くの人が動きます。それは、役割分担です。それにより、大きく儲けることができます。それが、『ビジネス』です。そして、大きく社会に貢献することができます。それが、『組織』だと言えます。
 
一つの組織の中でも、創造的な人が上に行くことになります。そして、大きな報酬をもらうことになります。社長、幹部、管理者、主任、一般社員、作業員。その報酬は、責任の重さで在り、成果の大きさです。
 
当然、創造という大変な役目とその責任を、進んで負う人間はそう多くはありません。だからその社員は、『人材』なのです。
そして、創造から生み出されるものも多くはありません。すごい事業モデル、ベストセラー著書、ヒット商品。
 
だからこそ、ビジネスにおいては、『開発と展開』という考え方が重要になるのです。その一つを全力で創る「開発」、そして、その出来上がったものを複数造り、大きく儲ける「展開」。これにより、大きく儲けることができるのです。
開発は、極小人数で行うことになります。そして、展開の段階に移ると、多くの人を動かすことになります。


冒頭のF社長は、事業モデルのアイディアを生みだすことができました。それが実現できれば、年商を数十億に出来るはずです。その市場性を調べるために、折込広告を打つことにしました。
 
企画書をつくり、デザイナーに依頼をしました。そのデザイナーは、フリーランスの登録サイトで見つけました。
 
出された案を見て、F社長は、落胆をしていました。そして、不満にもおもっているのです。「これは、イメージとは違う。」
そのタイミングで私に相談しました。「矢田先生、いかがでしょうか。」
 
私は、企画書とそのチラシ案を拝見しました。そして、その下には、デザイナーからのコメントが一枚あります。そこには、デザインの意図や行動の誘発策の説明が書かれています。
 
私は、率直な感想を言わせていただきました。「良いデザイナーですね。」
 
企画書とデザイン案を見れば、このデザイナーがしっかり自分の中で咀嚼し、創り出しているのが解ります。そして、その構成からもデザインの基本を持っていることが解ります。彼は、創造という自分の役目に真摯に向き合っている人なのです。そのコメントからも、顧客とのパートナーシップを大切にしようという姿勢が伝わってきます。
 
その出された案が、少しF社長とずれただけなのです。この彼となら、何度でもやり直すことができます。それにより、もっと良いものを生み出すことができるはずです。
 
F社長は、再度そのデザイナーに感じていることを伝えました。その結果、納得のできるチラシが出来上がりました。F社長、「少し価格が安すぎたでしょうか。」と言われました。
 
社長は、人を使い、大きな成果を出すプロです。
社内では、創造的な人間に、創造性の必要な仕事や役職を依頼します。造ることに適性がある人には、その業務をお願いします。
 
外部に対しても、同様に使い分けることになります。外部を使い分ける基準は、次のものになります。
何かを生み出したい時(創る)= 独立(個人)事業主に頼む。
やりたいことが決まっており、作業を依頼したい時(造る) = 企業に頼む。
 
こちらに答えがなく、パートナーシップで生み出すのを手伝ってほしい時には、前者の『個人』に依頼します。彼らは、独立事業主としての熱意と責任感を持ちます。デザイナー、設計士、マーケティング、システム開発、戦略型のコンサルタント。
 
それに対し、すでに答えがあり、依頼したいことも明確な場合は、後者の『企業』に依頼します。組織力があり、画一的なサービスを安定して提供してくれます。
WEB印刷、人材派遣、メンテナンス、コールセンター、多くのパッケージソフト、定型業務のコンサルタント。
 
それぞれの報酬も、見合うものになります。前者には、高額を払うことになります。(本人達にとって)。そして、後者に対しては、それなりの金額になります。
 
 
社長は、いまの自社に必要なものを見極める必要があります。『創る』が必要なのか、それとも、『造る』が必要なのか。
 
そして、それに相応しい相手を選ぶことです。管理者を選ぶ時、社員を採用する時、他社に依頼する時。すべては、その相手に何を手伝ってほしいかです。『創る』ことか『造る』ことか。
 
それが、社長の役目です。どの組織でも、トップが一番の創造力を持たねばなりません。また、その責任を背負う必要があります。
 
社員も外注先も、彼らは、社長が『創った世界』のなかで活きるのです。
社長の生み出した事業モデル、方針、目標。それがあることで彼らは、その力を発揮することができます。
 
その結果、それが実際の成果となった時に、社長は初めてそれ相応の報酬を得ることが許されるのです。
 
それが、経営のプロである社長という人です。
創ることに向かうのです。

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