No.554:仕組化が進まない会社の共通点・・・まず見直すのは社長のリーダーシップ

№554:仕組化が進まない会社の共通点・・・まず見直すのは社長のリーダーシップ

「先生、一向に進まないのです。」
建築業向けのシステムを展開するM社長からの言葉です。
同社は年商(粗利)1億5千万、社員数12名。私の本を読んで仕組化に取り組んでいるとのこと。しかし、その取組みがなかなか進まないのです。
 
私は確認をさせていただきました。
「今、具体的に何に取り組んでいますか?」
 
M社長は答えました。
「売上120%を目指しています。顧客とのコミュニケーションも強化しようと…」
原因の一つは、すぐに見つかりました。

リーダーシップには2段階ある


年商数億円から10億円へ進むとき、社長が必ず獲得しなければならないものの一つが「リーダーシップ」です。ただし、それは「自分が人一倍頑張るリーダー」ではありません。方針を示し、社員を動かし、組織で成果を実現していくリーダーシップです。
 
このリーダーシップには、次の2つの段階があります。
設計:何を実現するのか、そのために何をするのかを描く。
実行:設計した方針に沿って動き、成果を形にする。
すべての成果は、この二段階を経て実現していきます。
「よい設計」と「正しい実行」です。

設計段階での落とし穴


設計の段階で、欠けやすいのが「具体的な方針を示すこと」です。
「今期はどこを伸ばすのか」「どの顧客に集中するのか」そして「具体的にどうアプローチするのか」
これらが明確に示されなければ社員は動くことができません。その結果、ほとんどの取組みや今期の目標が進まないまま終わってしまいます。
 
例えば、「昨年対比120%の伸び」とは、具体的に何をするのでしょうか。「顧客とのコミュニケーションを強化する」とは、どんな仕組みをつくるのでしょうか。
 
聞けば当たり前のことに思われるかもしれません。しかし、これを本当に“具体化”できている社長は少ないのです。
実際のコンサルティングの場でも、私が「これは何を意味しますか?」「それは具体的にどの行動を指しますか?」と何度も深掘りすることで、初めてご自身の具体性の無さに気づく社長は少なくありません。

実行段階で問われること


もう一つのポイントが「相手との距離感」です。依頼する相手である社員の力量に応じて、距離を調整することが必要です。
 
たとえば「子供に水泳を教える」のと同じです。泳げない子供にはしっかり付き添い、手取り足取り教えます。一方、すでに泳げる子供に対しては「100mを5本泳いでおいで」で十分です。
 
社員も同じです。まだ考えられない人に「やれ」と言っても進みません。その仕事をやったことも、考えたこともないのです。彼が成果を出すためには、社長の適切な指示と伴走が不可欠になります。

一向に進まない典型的な例


ここで注意すべきは、二つの極端です。
・まかせきりでチェックしない放任
・細かく口を出しすぎて成長を妨げる過干渉
 
どちらに偏っても成果は出ません。社員の力量を見極め、適切な距離感を保つこと。これが実行段階でのリーダーシップの本質です。
 
冒頭のM社長は、この説明を聞いて、こう感想を漏らしました。
「私は両方当てはまります。具体性のない方針を出しているのに、細かく口を出してしまっていました。」
 
まさにこれこそが、一向に進まない典型です。
方針が曖昧だから結果が出ない。だから不安やイライラが募り、つい細かく口を出してしまう。すると社員はますます動けなくなり、その取組みも進まなくなる──このような悪循環が生まれるのです。

提言:社長は「方針」と「距離感」を同時に磨け


年商数億円から年商10億円に進む時に、事業モデルの変革が必要になります。そして、その仕組化が必要になります。そして、「社長のリーダーシップの変革」も不可欠なのです。
 
いままでの社員数名の時のような、自分がグイグイ引っ張るやり方ではこの先にいけないのです。成長の阻害要因が「社長のリーダーシップ能力の不足」であってはなりません。
 
社長はまず、社員が動かざるを得ないほどの具体的な方針を出します。
「今年はこの市場、この商品、この数字」──誰が聞いても迷わない、逃げられない指示を出すことです。
 
次に、社員の力量に合わせて距離感を調整します。まかせきりでもなく、過干渉でもなく、適度にミーティングを設けます。そこで、進捗の確認と次の行動の明確化を手伝います。
 
この二つが揃って初めて、年商10億円へ進むことができます。
「具体的な方針 × 適切な距離感」
これこそが社長のリーダーシップの本質なのです。

まとめ:次のステージで必要となるリーダーシップを獲得する


裏を返せば、社長が「具体的な方針」を示し、「適切な距離感」を取れば、全ては一気に動き出します。
 
年商数億円の社長のリーダーシップの延長に、年商10億円はありません。
 
10億の壁は、社長一人の頑張りでは越えられません。
次のステージで必要となるリーダーシップを獲得することです。
それこそが、会社の未来を切り開く唯一の道なのです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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