No.555:「大将の目の届く範囲」を超えろ──サービスにも品質を

№555:「大将の目の届く範囲」を超えろ──サービスにも品質を

この日は、クライアントK社長との飲み会です。カウンターの奥で、大将が包丁を動かしながら、静かに数名のスタッフへ指示を出しています。
 
おちょこに口をつけた後にK社長は言いました。
「先日、社員が勝手に判断し、顧客を怒らせてしまいました。」
 
私もおちょこを口に運びながら耳を傾けます。
K社長は続けました。
「いやー、でも彼が悪いわけではないのです。決めていなかっただけなのです。」
 
すでに本質が解っているK社長です。

サービスにも品質がある


工業製品には品質があります。「ここの幅は10センチ、その誤差はプラスマイナス1ミリ」という具合にです。
同様に、サービスにも品質があります。「メールの出し方」「見積書の作り方」「施工の仕方」など、すべてに品質があります。
 
そして、その良し悪しも工業製品同様に次の二つで決まります。
1.基準がよいか
そして
2.バラツキがないか
 
「良いサービス」とは、基準そのものが顧客にとって望ましいものであり、尚且つそれが毎回安定して提供されることを意味します。

個人品質の限界


個人経営の店ではその大将自身が品質になります。その料理の味付けも、スタッフの接客も、大将が確認し、その場で修正すれば事足ります。大将が“基準”であり、“バラツキの抑制機”なのです。顧客は大将の店に通っているのです。
 
しかし、事業を拡大するとなると話は別です。その店は、「属人性の塊」なのです。もちろん、個人店として自分のこだわりを形にしたいのであれば、それで問題はありません。むしろそれが売りになります。
 
しかし、店を増やす、すなわち、事業を拡大するためには次の二つしかありません。
1.品質を保つ仕組みをつくる
または
2.大将並みの人材をそろえる
かです。

「人材頼み」は必ず破綻する


どちらもなく、このまま店舗を増やしていけば、必ずバラツキが生まれます。
「同じブランドのこっちの店はおいしい、あっちはそうではない」
「あのスタッフの接客はフレンドリーであるが、あのスタッフは固めである。」
顧客の事前期待もばらつき、顧客の満足度もばらつくことになります。
 
我々は「品質を保つための仕組みをつくる」必要があります。
間違っても後者の「大将並みの人材をそろえる」に進んではいけません。そんな人材はそう簡単に調達できません。事業拡大のスピードは遅くなります。そして、その人材もいつか辞めていきます。その人が優秀であれば独立して競合店になります。

事業拡大には「仕組み」しかない


大量の顧客を相手にし、大量のサービスを量産するために必要なのは「品質」です。
品質とは、ある特定の人の能力や機転で保たれるものではありません。基準を設け、その基準を保つ仕組みをつくることによって、初めて実現されるのです。
 
社長が「大将の目の届く範囲」で何とかする時期は、もう終わらせなければなりません。事業を大きくすれば、社内は「目の届かないところ」だらけになります。そのとき社員は、それぞれが自分の基準で仕事を進めていきます。その先に待っているのは「混乱」と「顧客の信頼喪失」です。
 
あくまでも品質を支えるのは“人”ではなく“仕組み”なのです。
 
社長が一人で動き回るのではなく、誰が現場に入っても一定のサービスが提供できる。
その状態をつくることこそが、事業拡大の前提条件なのです。

提言:社長は「人」ではなく「仕組み」に向かうことです。


すべてに基準を設けることです。
そして、訓練プログラムによりバラツキを抑えることです。
その結果、より多くの顧客を喜ばせ、より多くの社員を活躍させることになります。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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