No.591:現場を動かすために必要なモノ、社長の安定に必要なモノ
住宅サービスT社長が言いました。
「先生、材料が入ってこない可能性があります。」
世の中の混乱もあり、価格高騰だけでなく、ついに“入らない”という話まで出始めたのです。しかし、そう言うT社長の顔に、迷いはありません。
私は聞きました。
「大丈夫そうですね。」
T社長は即答します。
「はい。方針は決めていますので。」
問題が起きてから考える会社は、すべてが遅くなる
多くの会社は、「問題」が起きてから考えます。
材料の値段が上がった。
人手が足りない。
お客様からのクレームが入った。
在庫が増えてきた。
そのたびに、「どうしようか」と会議が始まり、そして、「対策案」を考えるのです。
これでは、すべての対策が遅くなります。
いえ、それ以上の問題があります。
本当の問題は、“問題が起きる前”にあります。
現場が自主的に考えられないのです。現場から警告が上がってこないのです。
その結果、問題が社長のところへ届く頃には、既に手遅れに近い状態になっています。
そして、
・対策が場当たり的になる
・毎回判断が変わる
・結局すべて社長判断になる
ということが起きます。
だからこそ、必要なのが「方針」です。
方針とは、「こういう時にどう判断するか」を決めること
方針とは、「こういう時には、どう判断するか」を決めたものです。
例えば、
・材料価格が上がった時、どこまで転嫁するのか
・人手不足の時、どの順番で対応するのか
(他部署応援→派遣→採用 など)
・クレーム時は、責任追及より再発防止を優先する
・在庫を持って良い範囲、上限、廃棄基準を決める
こうしたものです。
実際には、上記のそれぞれにA4一枚程度は必要になります。
この“判断基準”があるから、現場は動けるようになります。
それ以上に重要なのは、「そうならないように」日々、自分たちで、考え動けるようになることです。
つまり、方針とは、“問題発生後の対応”ではなく、“問題発生前の思考”をつくるものなのです。
「マニュアル」と「方針書」は、まったく違う
ここで確認しておきたいことがあります。
それは、「マニュアル」と「方針書」は違うということです。
マニュアルは、「こうやってやれ」という手順書です。
日常業務は、それで回ります。
しかし、必ず何かしらのイレギュラーが起きます。
材料の搬入が遅れる。急に複数人が休む、お客様の要望が変わる。
それを、現場のリーダーが判断することになります。
それは、マニュアルでは対応できません。
その時に、活きるのが方針書です。
方針書とは、“迷った時の優先順位”と“判断の軸”が書かれたものです。
それにより、現場は自分達で考え、動けるようになるのです。
方針書がないから、社長が現場を離れられない
ところがです。
この方針書が無い会社が、驚くほど多いのです。
マニュアルはある。しかし、方針書が無い。
これは、経営の現場における不思議です。
実際、世の経営書を見ても、「方針書」という言葉はほとんど出てきません。
方針がないから、社長が現場を離れられないのです。社員が自分で判断できないから、全部、社長に確認が来るのです。
逆に言えば。方針書をつくることで、社長の頭が整理され、社員の動きは大きく改善されます。
会社にも、「長期方針」が必要である
そして、この方針書は、現場だけのものではありません。
会社にも、“優先順位”と“判断の軸”が必要になります。
それが、長期方針です。
「うちは、どこへ向かう会社なのか」
「どんな評判、どんなノウハウを積み上げるのか」
「何を捨てるのか」
これがあることで、会社は環境変化の中でも、迷わず進むことができます。
逆に、これが無い会社は、大いにぶれることになります。
売上が減るとぶれる。
他社の成功事例を聞いてぶれる。
社員や他人の意見でぶれる。
そして、毎年言うことが変わる。
当然、社員はこう思っています。
「去年と言っていたことが違うな」
「結局、何を目指している会社なのだろうか」
まとめ:強い会社は、「すべてに方針」を持っている
強い会社は、“すべてに方針”を持っています。
営業方針・採用方針・育成方針・出店方針・値決め方針・在庫の方針 などなど。
そして、長期方針です。
長期方針なのです。
今の御社に必要なのは、「長期方針」なのです。
長期方針が無ければ、経営はぶれ続けます。
いまの環境にも、振り回されることになります。
そして、その時、社長の心も大揺れになります。
いまだからこそ、長期方針を持つことです。
長期方針だけが、会社にも社長の心にも安定をもたらせます。
必ず道は開けます。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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