No.593:利益率の低い会社ほど、人材育成を語る!?
「人が育たないのです。」
建設業K社長が相談に来られました。
採用もしている。研修もやっている。評価制度も整えた。
それでも、なかなか社員が育たないと言います。
私は、決算書を確認します。
すると、粗利率が低い。そして、営業利益率はさらに低い。
私はこうお伝えしました。
「社長、人材育成の前にやることがありますね。」
人が育たないのではない
多くの年商数億円の会社は、人が育たない原因を社員に求めます。
やる気がない。能力が低い。責任感がない。
しかし、これは完全に間違った考え方です。
私は、これまで数百社の会社を見てきました。そこでは次のような傾向があります。
それは、『人材育成に悩む会社の多くは、そもそも利益率が低い』ということです。
まず見るべきは粗利率です。
粗利率が低い会社には共通点があります。
それは、「価値」ではなく「原価」を売っていることです。
値決めには四種類ある
値決めには四つの方法があります。
① 原価の積み上げ ② 相場 ③ 価値 ④ ブランド です。
利益率の低い会社の多くは、「原価がこれだけ掛かるから」、「他社がこの値段だから」という理由で価格を決めています。
つまり、原価や相場で商売をしているのです。
当然ですが、これでは利益は残りません。
どれだけ社員が頑張っても、手間賃を稼いでいるだけになります。
会社は忙しい割に、儲からない状態になります。
営業利益率は会社の仕組みを表している
さらに見るべきは営業利益率です。
粗利率が低ければ、営業利益率も低くなります。しかし問題はそれだけではありません。
粗利率以上に営業利益率が低い会社があります。
これは会社の中で大きなロスが起きている証拠です。
・手戻りが多い
・管理者が機能していない
・採用しても辞める
・未熟な社員が多い
・社長が現場に張り付いている
つまり、仕組化されていないのです。
その結果として、営業利益率が低くなっています。
これも人が悪いのではありません。会社の仕組みの無さが、利益を食い潰しているのです。
粗利率があるから“余計なこと”ができる
ここで多くの年商数億社長が順番を間違えます。
人が育たない。だから教育を強化する。研修を増やす。評価制度を作る。
しかし、その方向性は間違いです。
まず我々が最初にすべきは「粗利率」の改善です。
粗利率があるから、社長は現場を離れることができます。もしそれが無ければ、会社を維持するために、社長も「一人工」として働くことになります。
また、粗利率があるから、管理者を任命することができます。そして、管理業務に時間を割くことができます。そうでなければ、管理者が抜けた分、生産性が落ちることになります。
そして、粗利率があるから、ミーティングをすることができます。社員同士のコミュニケーションもとれ、業務の改善も進みます。そうでなければ、ミーティングが「邪魔」なものに映ってしまいます。
粗利率が高いから、“余計なこと”ができるのです。
それは大概が“未来の仕事”です。
粗利率が低いと、「今日の糧」を得ることに精一杯になります。
その結果、仕組化も進まずにいるのです。
仕組みが無ければ、管理者は機能することはなく、社員の育ちは遅くなります。
粗利率が低いと、会社全体に「余裕」が無くなるのです。
本当に見るべきは事業モデル
「うちは、人が育たない」
という相談があると、私は、数字を確認させていただきます。
粗利率はどうか。
そして、営業利益率はどうか。
粗利率が低いのであれば、事業モデルが悪いのです。
営業利益率が低いのであれば、仕組みが悪いのです。
根本原因を正しく見極める必要があります。
事業モデルに問題があると、人に依存することになります。
仕組みに問題があると、社員が活躍できません。
そのため人の入替り(退職と採用と戦力化)が起きます。
その状況のなか、社長には「余裕」がなくなります。
その時に短絡的に「人」に向かってしまうのです。「いい人さえ居れば…」
または、経営者の勉強会や似非コンサルに「人材育成」を吹き込まれます。
その結果、長い長い停滞期、それどころか最悪期を過ごすことになります。
「人が・・・」、「社員が・・・」、そう思えてしまった時には、確認してみてください。
粗利率を確認してください。
営業利益率を確認してください。
そこに、ビジネスモデルと仕組みの出来が現れています。
年商数億の会社に、人材育成の問題など、存在しないのです。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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