No.596:なぜ、文章を作っても仕組みができないのか。
設備メーカーN社の社長が、相談に来られました。
「先生、全部文章化しました。」
業務の手順、判断基準、チェック項目、社員に守ってほしいこと。
N社長の右腕の横には、三冊の分厚いファイルが置かれています。
私はお聞きしました。
「それで、動きましたか。」
N社長は、表情を固めたまま答えました。
「いいえ、動きませんでした。」
文章化と仕組化は違う
この相談は、本当に多いものです。
「仕組化のために、マニュアルを作りました。でも、機能しませんでした。」
多くの会社が、ここで同じ間違いをします。
マニュアルを作れば、会社が動く。
文章化すれば、社員がその通りに動く。
ルールを書けば、現場が変わる。
しかし、実際にはそうなりません。
なぜなら、文章化と仕組化は違うからです。
文章は、書かれたものです。
仕組みは、実際に回るものです。
文章を作っても、それを社員が見るタイミングがなければ使われません。
定期的にそれを確認する人がいなければ、守られません。
間違えた時に直すサイクルがなければ、改善されません。
その更新するサイクルがなければ、一瞬で古くなります。
つまり、マニュアルそのものよりも、マニュアルを運用する仕組みが大事ということです。
形を作ることと、機能させることは違う
これは、マニュアルに限りません。
制服を選ぶことよりも、制服をどう運用するかが大事です。
多くの会社では、「この色がいい」、「このデザインがいい」と制服を選ぶことには、一生懸命になります。しかし、いつ配布するのか。破損したときはどうするのか。その運用のルールがありません。
そして、その配布や回収が、「その時になったら忘れずに行われる」という仕組みがありません。また、その運用ルールを「定期的に見直す」や「必要な時に改善する」というサイクルもありません。
会議を作った。しかし、何を報告し、誰が判断し、何を次回確認するのかが決まっていません。その結果、ただ集まって話すだけの会議になります。
かっこいいホームページができた。しかし、運用の仕組みがないので、ほったらかしになっています。トップページのトピックスには、「数年前の日付」が残っています。
立派な人事制度はできた。しかし、その評価面談がうまくいっていません。自分達では運用できないために、いつまでもコンサルタントの助けが必要になります。
社内の全部が、これなのです。
マニュアル作成は第一歩でしかない
すべて同じなのです。
形を作ることと、機能させることは、まったく違うのです。
「マニュアルを作りました。」それは第一歩です。
しかし、そこで終わってはいけません。
そのマニュアルをいつ使うのか、誰が確認するのか、どの場面で見るのか、守られていない時に、誰が正すのか、現場に合わなくなった時にどう改善するのか、新しい社員にはどう教えるのか。
ここまで設計して、初めて仕組みに近づきます。
マニュアルの運用とは、マニュアルの作成とは、まったく別物です。
御社に必要なのは、マニュアルそのものではありません。
マニュアルを運用する仕組みです。
それがなければ、「使われない立派なマニュアル」が出来上がります。または「数年も更新されていないチェックシート」が現場で使われ続けることになります。
文章を作ることと、仕組みを作ることは違うということです。
もし文章化=仕組化であれば、これだけ多くの会社が苦しむことも、停滞することもありません。数倍、数十倍、数百倍の数の会社が、もっと大きくなっているはずです。
マニュアル、文章、それは仕組みの極一部に過ぎません。
必要なのは、それを実際に回す仕組みであり、設計です。
仕組みは、つなげて初めて回る
残念ながら、これを書面でお伝えするすべを、私もまだ持っていません。
当社のコンサルティングでは、実際に作っていただきます。そして、実際に回していただきます。
その時、一つの仕組みだけを作るのではありません。いくつかの仕組みを繋げてつくっていきます。
業務の仕組み、確認の仕組み、改善の仕組み、教育の仕組み、会議の仕組み、責任者が判断できる仕組み。いくつもの仕組みをつなげて作っていきます。
そうすると、実際に回り始めます。社員が改善のサイクルに加わるようになります。
そして、その社長自身も「ああ、仕組みとはこういうものか」と掴むことになるのです。
仕組みは、単体では動きません。
マニュアルだけ、会議だけ、チェックシートだけ、人事制度だけ。
それぞれを作っても、会社は変わりません。
それらがつながり、現場の行動になり、確認され、改善されることで、本当の仕組みになります。初めて、効果を発揮するのです。
頑張りどころを間違えてはいけない
マニュアルを一生懸命作る。
文章を一生懸命整える。
制度を一生懸命設計する。
それ自体は悪いことではありません。
しかし、そこで終わってしまえば、会社は変わりません。
これから会社を整える時には、すべてをこの考え方で作っていく必要があります。
「何を作るか」ではなく、「どう使わせるか」です。
そこに向かってください。
ここで頑張りどころを間違えれば、長い時間を無駄にすることになります。
文章化しても、会社は変わりません。
運用されて初めて、仕組みになります。
正しく仕組みづくりを始めましょう。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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