No.602:社員が読まなくても、マニュアルは必要!?それは会社を守るため
設備工事業のA社長から、こんな相談を受けました。
「先生、マニュアルをつくろうと思っているのですが、社員から『どうせ誰も読まないですよ』と言われまして・・・。そこまで細かくつくる必要がありますかね。」
A社は、年商3億円ほど、社員は20名。
業績は順調で、これから営業所を増やし、年商5億、10億を目指そうとしています。
私は、A社長に聞きました。
「社長、マニュアルは何のためにつくると思いますか?」
A社長は答えました。
「新人教育ですかね。」 ・・・・(違いますね)
新人の教えるためのマニュアル、もちろん、それもあります。
しかし、それはマニュアルの役割の一つにすぎません。それも極小さな。
マニュアルは、社員に読ませるためにつくるのではありません。
会社を守り、会社を大きくし、会社を進化させるためにつくるものです。
人に教える時には、必ず劣化が起きる
人が人に仕事を教える時、100%を伝えることはできません。
例えば、あるベテラン社員が、その仕事について100の知識を持っているとします。
その人が、新しく入った社員に仕事を教えます。
では、その100の知識のうち、どれだけ伝わるでしょうか。
100%はありません。80%も伝わらないでしょう。
本人にとって当たり前になっていることは、わざわざ説明しません。
長年の経験から身につけた判断基準も、本人の頭の中に入ったままです。
なぜ、その順番でやるのか。どこを見て判断するのか。どこまでなら自分で判断してよいのか。
こうしたことは、言語化しなければ伝わりません。
それ以上に、文章化しないと【共通認識】にならないのです。
仮に100の知識のうち、80が伝わったとします。そして、その社員が数年後、次の新人に仕事を教えます。その時、80がそのまま伝わることはありません。
80が60になります。そして次は60が40になります。
社員が辞めると、すべてが失われる
人から人へ教えるだけでは、会社の知識は確実に劣化していくのです。
しかも、人は辞めます。ベテラン社員が退職すれば、その人の頭の中にしかなかった知識や経験も、一緒に会社からなくなります。
何年、何十年とかけて蓄積したものが、人の退職とともに消えてしまうのです。
これほど恐ろしいことはありません。
会社の知識は、個人の頭の中ではなく、会社に残さなければなりません。
言語化する。基準にする。誰でも確認できる状態にする。
そのために、マニュアルが必要なのです。
会社を守るためのマニュアルが必要なのです。
会社を大きくするためにも、マニュアルが必要である
そして、会社を大きくするためにも、マニュアルが必要です。
会社を大きくするとは、仕事を量産することです。
営業を量産する。施工管理を量産する。事務を量産する。そして管理者を量産する。
今、一人の優秀な社員ができている仕事を、二人、三人、五人、十人とできるようにしていく。それが、会社を大きくするということです。
ところが、その仕事のやり方が、その人の頭の中にしかなければ、当然、量産できません。
一人目が二人目に教え、二人目が三人目に教える。
これを繰り返せば、先ほど説明した通り、伝わる内容はどんどん減っていきます。
しかも、教える人によって内容も変わります。
Aさんはこう教える。Bさんは違うやり方を教える。Cさんは、自分なりに省略して教えます
拠点が一つのうちは、それでも何とか回るかもしれません。
しかし、営業所を二つ、三つと増やしていけば、そうはいきません。
東京ではこのやり方。大阪では別のやり方。名古屋では、また違うやり方となります。
仕事をコピーし、仕事を量産する
これでは、会社として同じ品質を保つことができません。
会社を大きくするとは、優秀な人を増やすことではありません。
同じ仕事を、同じ品質で再現できるようにすることです。
そのためには、仕事のやり方を言語化し、会社の標準として残しておく必要があります。
マニュアルとは、仕事をコピーするための原本です。
原本があるから、同じものを何度でもつくることができます。
原本がなければ、その都度、人から人へ伝えるしかありません。
それでは、量産になりません。
年商3億の会社を、5億、10億へと展開していくためには、仕事そのものをコピーできる状態にする必要があります。
だから、会社を大きくしたければ、マニュアルが必要なのです。
改善するためにも、基準が必要である
マニュアルには、もう一つ重要な役割があります。
それは『業務改善』です。
会社は、今のやり方をそのまま続ければよいわけではありません。
もっと早くできないか。ミスを減らせないか。生産性を上げられないか。お客様に、もっと喜んでもらえないか。
常に、仕事の質を高めていく必要があります。
しかし、改善するためには、まず基準が必要です。
全員が同じ100の仕事を共有している。その状態であれば、「この100を、どう110にするか」という議論ができます。
ところが、Aさんは80。Bさんは60。Cさんは40。なのです。
しかも、それぞれが自分なりのやり方で仕事をしている。何が正しいやり方なのかも、言語化されていない。そんな状態なのです。
改善のスタートがそもそもバラバラ
この状態で、「みんなで業務改善をしよう」と言っても、うまくいきません。
改善のスタート地点がバラバラなのです。
ある人は80から考える。ある人は60から考える。ある人は40から考える。
これでは、改善の議論そのものが噛み合いません。
そして、その本人も自分が知らないことが多い、自分が合っているか自信が無いのです。
まず、会社としての100を決めることです。
そして、その100を全員で共有することす。
・・・実は、仕組みとはこっちのことを指します。マニュアルは仕組みでは無いのです。
その上で、100を101にする。105にする。110にする。
これが業務改善です。
今の仕事が言語化されていなければ、改善は積み上がりません。
せっかく良いやり方が生まれても、その人だけのものになり、また消えていきます。
改善とは、個人の工夫ではありません。
会社の基準を書き換えていくことです。
だから、仕事の質を高め続けるためにも、マニュアルが必要なのです。
マニュアルは会社の基軸である
マニュアルが会社の基軸となります。
会社を守るためにマニュアルが必要です。
会社を大きくするためにマニュアルが必要です。
そして、
会社をより良くするためにマニュアルが必要なのです。
マニュアルは、社員が読むか、読まないかというレベルの存在ではありません。
ましてや、現場からの「めんどくさい」に社長がなびいていてはダメなのです。
マニュアルを基軸にして、仕組みはつくられます。
マニュアルを基軸にして、会社の連続性がつくられるのです。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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