No.607:採用した5人が、全員辞めた。社長は何を疑うべきか?
設備業を営むS社長が当社に相談に来られました。
事前に提出いただいた課題一覧表を拝見していると、S社長が言いました。
「先生、新卒採用した社員5人、全員辞めました。」
私は、お聞きしました。
「それは大変ですね。何が原因ですか?」
S社長は、目線を上に向けて言いました。
「きっとこれも、仕組みがないことが原因だと思います。」
私は追加の質問をします。
「どんな仕組みがないのですか?」
人のせいにした瞬間、考えることをやめる
「新卒5名、全員が辞めた」
こういう時、我々は何を疑うべきでしょうか。
「浅い」ところから確認していきましょう。
まず「人」です。
「最近の若い人は続かない」、「彼らは自分勝手だ」
これは、最も悪い考え方です。これで片付ければ、何も変わりません。
この発想が生まれたのであれば、自分が「依存症」に取りつかれていることを疑う必要があります。
そして、採用。
「採る人を間違えた」、「今度はもっと良い人を採ろう」
この時、求人のやり方を改善しようと思うと何も解決しないことになります。「スカウト型にしよう」「〇〇という媒体がいいらしい」。
そもそもの原因は「会社に魅力がない」ことです。その結果、良い人は来ず、レベルの低い人が集まっているのです。
あるいは、育成を疑います。
「教育が足りなかった」、「理念をもっとしっかり共有しなければ」
この時の根本原因はこんなところにありません。育成不足で社員が辞めることはありません。就職は誰にとっても勇気がいることです。それを1年も経たずに辞めることを決意させたのです。「職場が冷たい」のです。
その結果、彼らは「歓迎されていない」と思い、去っていったのです。では本当に冷たい職場なのでしょうか、一人ひとりはいい人ばかりです。
根本原因は「トレーナーが任命されていない」「教え方を任せている」ことにあります。
人、採用、育成。
ここに囚われる社長は、少なくありません。そして、何も変わっていないのに、また採用に向かいます。
根本原因1.事業が、社員に任せられる形になっていない
深く見ると、疑うべき原因は三つあります。
一つ目は、事業です。
事業に特色がなく、顧客に刺さっていません。そのため、売るのに多大な人間力が必要になります。またはクリエイティヴが必要です。企画や応用が多く、並みの社員ではこなせません。
その結果、自分が活躍できないのです。そこでは社長と一部の優秀な社員だけが忙しく働いています。そこでは、自分の存在意義が無いのです。
並みの社員が成果を出せる事業になっていない。これが、第一に疑うべきことです。
根本原因2.仕事が、文章で決まっていない
二つ目は、仕組みです。
そこに入った者が、そこのルールやその業務のやり方を知るためには、「人」に訊く必要があります。ましてや「今日、自分がやること」さえも、分からないことがあります。
そこに長くいる人は、分かっています。でも自分が知るすべがないのです。
知るためには、相当な心の消耗が必要です。
そこでは、「決まっていること」がないのです。
その社長は言います「決まっているものはあります」と。しかし、文章になっていないものは、決まっていないのと一緒です。彼らは知りようがないからです。
その結果、「人に訊くしかない」イコール「属人化」です。
根本原因3.管理者としての仕事がない
三つ目は、組織です。
これは言い換えると「キャリアアップできない」ということです。
そこそこ能力と責任感がある社員が、チームリーダーや課長の役職をもらいます。しかし、やっていることは、いままでの現場の仕事と同じです。
自分はもっとやりたいのです。社長も「自由にやってよい」と言ってくれています。
しかし、何をどうやればよいのか、分かりません。
分からないまま、時間だけが過ぎていきます。そこに焦りもあり、新天地を求め転職を決意します。
仕組みがない会社では、入社1、2年での退職が起きます。管理者が機能していない会社では、3、4年働いた社員が辞めていきます。
前者では、社長が「合わない社員が去った」と言います。後者では、その本人が「やりたいことが見つかった」と言います。
その退社時期によっても、その原因に予測がつくということです。
疑う順番が、会社を変える順番になる
ここで言いたのは、疑う順番を間違えるな、ということです。
その疑う順番が、そのまま手を付ける順番になってしまいます。
あくまでも、最初は事業です。
そして、仕組みです。そして組織。そして最後に、人です。
会社を変える順番も、この順番になります。
逆に人から向かえば、停滞まっしぐらになります。
事業に欠陥があれば、仕組みを整えるだけではダメということです。
仕組みがなければ、良い人を採っても、現場で力を発揮できません。
組織が回っていなければ、優秀な社員のその向上心も無駄になります。
採った社員が辞める、育った若手が辞める、頼りにしていた管理者候補が辞める。
人が辞めることは、多くの費用と時間を失います。
それ以上にショックなことです。
再度同じことを繰り返さないことです。そのためには、浅いところで思考を止めず、深いところまで見るということです。
そのための、順番になります。
順に整えるのです。
間違ったところで時間を失ってほしくない、これが私の本気の想いです。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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