No.612:仕組化をすると、不正が3社に1社の割合で見つかる
住宅サービス業を営むT社長が相談に来られました。
「先生、悔しくて仕方がありません。」
話を聞くと、会社のナンバー2である社員が不正をしていたことが分かったとのこと。
その額は累計で数千万円。会社として受注した仕事を、自分の知り合いの会社に横流ししていたのです。
長年、信頼して仕事を任せてきた社員です。
T社長の悔しさは、相当なものでした。
しかし、これも通る道なのです。
実際、仕組化を進めると3社のうち1社で不正が発覚します。
小さな会社はセル方式である
仕事の進め方には、セル方式と分業方式があります。
年商数億の会社では、セル方式が基本になります。
それは、分業するだけの仕事量がないからです。
創業当時には、社長自身が営業から見積り、受注、手配、施工管理、納品、請求まで、一連の仕事を担当することになります。
そして、ある規模になると、経理や納品の一部を分業化します。そこまでは問題なくいきます。
その後、営業、見積り、手配、施工管理の部分を、社員化しようとします。ここから停滞が始まります。手配ミスや不良品の発生、納期遅れが増えます。今まででは、考えられない問題が起きるのです。
これは、セル方式から分業方式に移行する際に、仕組化を進めなければならないのに、それに取り組まなかった結果です。
セル方式が不正の温床になる
セル方式には、メリットもあります。
一人が広い範囲を担当するため、責任感が生まれます。顧客への対応も早く、柔軟に動くことができます。
しかし、大きな欠点もあります。
仕事が個人に依存することです。
一連の仕事をこなすためには、高い能力と経験が必要です。そのため、仕事をできるのが、社長と一部のベテラン社員だけになります。
新しい社員が入っても、なかなか一人前になれません。
そして、その担当者以外には、何が行われているのか分からないという問題が存在します。ここに、不正が生まれる温床ができるのです。
不正には決まったパターンがある
代表的な不正には、次のようなものがあります。
ぜひ、知っておいてください。不正のパターンは、それほど多くありません。知っておくだけでも、異変に気づきやすくなります。
① 横領
会社の現金や売上金を着服する。顧客から受け取った代金を会社に入金せず、自分のものにしてしまう。
② 横流し
会社が受注すべき仕事を、自分や知人の会社に回す。会社の顧客や案件を利用して、個人的な利益を得る。
③ ピンハネ
外注先への発注金額を水増しし、その一部を自分が受け取る。会社が知らないところで、利益を抜き取る。
④ キックバック
特定の業者に仕事を発注する見返りに、金品を受け取る。会社の有利ではなく、自分にとって有利な取引先を優先する。
⑤ 架空請求・水増し請求
実際には行っていない工事や作業を請求する。あるいは数量や金額を上乗せし、会社から不正にお金を引き出す。
それが、仕組化によって明るみになる
これらは、担当者が一連の業務を握り、チェックが働かないことで起きます。
そして、年商数億の会社では、大手のような3年に一度の人事ローテーションもありません。そのため、なかなか発見できません。結果として、不正は何年も続くことになります。
それが、仕組化によって明るみになります。
案件の流れが見えるようになり、基準ができ、複数の人がその業務に関わるようになります。すると、不自然な取引や数字が浮かび上がることになるのです。
そして、その本人は、その仕組化を楽しく思っていません。
それどころか、恐れています。時に、妨害をすることもあります。
大概、不正をする者は、日中どこにいっているか分からないものです。自宅、漫画喫茶で、時間を潰しているケースも多くあります。楽に金が手に入るようになると、勤勉さも失われます。
そして、調査の手が自分に掛かりそうになると、退職を願い出てきます。
3社に1社で不正が見つかる
当社のクライアントでは、仕組化を進める過程で、およそ3社に1社の割合で、何らかの不正が見つかっています。これは、驚くべき割合です。
世の中の会社の3分の1で不正が行われているという意味ではありません。しかし、それだけ多くの会社で、今まで見えていなかった問題が見つかるのです。
しかも、その多くは、何年にもわたって続いていました。
社長は信頼して任せていました。そんなことをするとは、全く疑っていません。
最初は、小さな金額だったのです。あるいは、偶然起きたことかもしれません。または、取引先からの誘いがきっかけだったかもしれません。
その時、それについて誰からも問われることがありませんでした。
そして、徐々に金額は大きくなり、手口は大胆になってきます。
やがて、本人の精神も生活も崩れていきます。
問題は、その社員が辞めれば終わり、ということではありません。
次の社員も同じように不正ができる会社のままということです。
不正を生まない会社をつくることが社長の仕事である
本来なら、もっと早く発見して、止めてあげるべきだったのです。
不正をする本人が悪いことは、言うまでもありません。
しかし、不正を何年も発見できない会社の状態にこそ、問題があるのです。
当然ですが、私たちが仕組化を進める目的は、不正を見つけることではありません。
人材の活用の幅を広げ、生産性を高め、社長がいなくても回る会社をつくることです。
しかし同時に、今まで見えなかったものが見えるようになります。
そして、社員も不正を犯そうなどと、まったく考える余地がない環境になっていきます。
仕組化は、会社を守ることになります。
また、社員を守ることにもなるのです。
人を信頼することと、仕事を任せきりにすることは違うのです。
会社を大きくするためにも、社員を守るためにも、分業と仕組化を成功させなければなりません。
あまり気分の良い話ではありません、しかし、これは社長が知っておく必要があると思い、まとめました。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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