No.550:人が採れない会社が最初に見直すこと

「先生、人が採れないんです……」
M社長は、困り果てたように言いました。
リフォーム業を営むM社は、大きく売上を落としていました。その理由は「人がいない」です。人が辞め、その分の売上を補うために社長が営業に出ています。その結果、仕組みづくりが止まっています。まさに悪循環の只中です。
本来であれば、この段階で「採用の話」をするべきではありません。
しかし、コンサルティングが前に進まない以上致し方ありません。
私は提言をしました。
「では、最低限の条件だけチェックしておきましょうか。」
「人が採れる会社」だけ生き残る
いまや「人が採れるかどうか」が、会社の成長を左右する時代です。それどころか生き残れるかどうかを決定づけます。
多くの会社は、仕事はある、営業すれば受注できる、でも「人が居ないから受けられない」という状態にあります。
特に中小企業は、“質”も“量”も足りていないのです。
・人数が足りない
・いい人が居ない
この2つは、実は同じ問題に集約されます。それは「求職者に会社が選ばれていない」ということが根本の原因になります。
採用できない会社の特徴
企業の採用力の基盤となるのは、事業の魅力や会社の立地などの総合的な魅力にあります。しかし、今回は緊急事態ということで「すぐやるべきこと」を確認することにしました。
1.採用サイトがない・貧弱である
- コンテンツが少ない:顧客向けと同様に、求職者向けのメッセージも必要です。
- 人の気配がしない:どんな人が働いているのか、職場はどのような雰囲気か。
2.処遇が悪い
- 給与が低い:後々増額するにせよ、今より低い給与では転職の動機が削がれます。
- 休日が少ない:学生時代は週休二日、これが彼らの生活の基準となります。
※実際は「給与が良い」「休みも多い」のに“表現されていない”ケースも多くあります。
3.媒体の選定ミス
- 欲しい人材が見ていない媒体に出している:頭脳系、肉体系、サービスやITなど、今は其々に専門特化した媒体が多くあります。マッチしたものを選びたいところです。
4.お金をかけていない
- 無料媒体に頼る、または広告費を極端に抑えている:無料だから無料で良いはずがありません。いい人が欲しければしっかり広告費を掛けていきましょう。
上記の状態であれば、優秀な人どころか、並みの人も採れることはありません。
もしそれで採れたとしても、それは偶然です。そこに再現性は無いのです。
採用の前に“やるべきこと”がある
社長がやるべき改革には順番があります。
ここで改めてその原則を確認しておきましょう。
1.魅力ある事業にする(顧客に必要とされる、他社に勝てる)
2.組織をつくる(部門の協働、管理者を機能させる)
3.仕組みを整える(再現性と効率性を実現する)
そのうえで
4.採用と短期戦力化の仕組みをつくる(量産体制に入る)
この順番は絶対です。
これらが出来ていないと、「採った人がすぐに辞める」または「育った頃に会社を去る」ことになります。
悪循環:人が採れないから社長が現場に出る
冒頭のM社はまさにこの状態でした。コンサルティングを開始し、約半年。仕組みも組織もその構築も道半ばです。全く、人が定着も活きる会社にもなっていないのです。
しかし、M社長の心は完全にそっちに向かっていってしまっています。自らが営業に出て、会社を維持しようと必死なのです。その結果、仕組みづくりが一向に進まないのです。
自分が現場に入る、仕組みづくりが進まない、そして、人がまた辞める・・・。このまま続けていては、この悪循環を断ち切ることはできません。
そこで「最低限やるべきこと」が出来ているかどうか確認することを提言したのです。
すると、M社は上記の「人が採れない会社」そのものであることが解りました。この状態で求人を掛けても人が採れることはありません。もし採れたとしても、その人は「まともではない」のです。
M社は、いままでこんな状態でやってきたのです。人の問題で苦しむのは当然のことなのです。
採用できる1社が圧倒的に優位になる
今の時代は、人が採れる会社が勝つ時代なのです。その会社だけが、営業することも、受注することも出来るのです。そして、その1社に更に優秀な人材が集まることになります。その一方で、その他多くの会社は採用が進まず落ちていくことになるのです。
どんな地域、どんな業界にもよい人はいるものです。
その人達に「選ばれる会社」になるのです。
その地域に同業が3社あるとします。
転職活動をしている10人のうち、8名は同じ会社を選びます。その1社に自社がなれれば圧倒的に優位に立てます。選ばれない他の2社に陥れば「他社の選考に落ちた人を採用」か「全く人がこない」状態になり、徐々に体力を削られることになります。
“採用難”という言葉に惑わされてはいけません。採れないのではなく、自社が選ばれていないだけなのです。自社が採れない分、他社(それも1社)が採れているのです。
その1社になることを本気で考えることです。
提言:本当によい会社にする
確かに、『いまの何もない自社』では、人が採れないのは“仕方がない”面もあります。
だからこそ、根本的な改革に向かうことが必要なのです。
長期的な取組みなしには、根本的な解決はないのです。目先を追っていては、未来は変わらないのです。
取り組むべきことは明確です。
・よい会社にすること
・優秀な人に選ばれる会社になること
・採った人が短期間で活躍できる仕組みを持つこと
・優秀な人が活躍できる環境を整えること
これ無しには先は無いのです。
採用は、経営力の最終の指標です。
今は一時、「人を採ること」に向かったとしても、やはり一つひとつ改革を進めるのです。
M社長、一緒に頑張りましょう。
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矢田 祐二

理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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