No.565:なぜ社員は辞めるのか。動かない会社には、人は残らない。

№565:なぜ社員は辞めるのか。動かない会社には、人は残らない。

よく晴れた日、美容業N社長が当社に相談に来られました。
1店舗で年商1億円を超えており、この業種では非常に優秀な会社です。この規模を5年ほど「維持」しているとのことでした。
 
N社長は言いました。
「2~3年で人が辞めるのです。そのため、売上が増えないのです。」
 
私は少し考え、お尋ねしました。
「会社の雰囲気はどうですか?」
 
N社長は静かに答えました。
「悪いです。絶えず人間関係の問題が起きています」

社員が辞める時期で会社の課題が解る


社員が辞めるというのは、単なる“個人の問題”ではありません。
辞めるタイミングによって、その会社が抱える構造的な課題が見えてきます。
 
数か月での退職――受け入れる側の問題
入社して数か月で辞めてしまう社員が多い場合、受け入れる側の問題が予測できます。
・教える先輩が面倒くさそうに教える。
・職場が冷たく、無関心。声掛けがない。
・やることが与えられず、放任される。
・会社全体が暗い。人間関係が悪い。先輩社員に覇気がない。
 
その結果、本人は「歓迎されていない」と感じます。そして、勇気を出して入社したはずの会社を、数か月で退職することを決めます。
 
これは、本人の忍耐力や能力の問題ではありません。
明らかに仕組みの欠如です。仕組みの無さが、今の社員にそうさせているのです。
(このコラムで何度もお伝えしている通りです。もっとしっかり知りたい人は、私の赤い本をお薦めします。)

2~3年での退職――会社に見切りをつけた


「この会社ではこれ以上は成長できない」、「自分の活躍の場がない」と、去っていきます。この場合、根本には、どちらかの構造的な問題があります。
 
高いクリエイティヴが求められる場合
事業やそのサービス提供に高いクリエイティヴが求められます。そのため、社長や一部の優秀な社員しかそれをできません。
その結果、いつまでも自分は活躍できずにいます。そして、退職をしていきます。それに気づくまでの期間が、2~3年なのです。
 
クリエイティヴが抑えられている場合
これが冒頭のN社です。
N社では、事業モデルも分業も出来ており、社員のクリエイティヴはかなり抑えられています。そのため、採用した社員の短期間での戦力化が可能です。そして、生産性も高く、給与も高い水準です。
 
しかし、その分『飽きる』のです。
その業務を毎日こなします。最初の数か月は覚えることがあります。しかし、それ以降は、新たに覚えることはなくなります。
 
もともと職人気質の人が多い業種です。彼らの「上達したい」「磨きたい」という欲求に応えられていません。同じ専門学校の同級生が技術を高めている話を聞き、焦りが生まれます。
 
さらに会社自体も大きくなっていません。そのため、毎日同じ顔ぶれです。
自分の上には店長がいて、その上には社長がいます。そして、その上下関係は変わらず、この先も続くのです。

優秀な社員を止めるには「未来」と「成長」が必要


優秀な社員ほど未来を見ています。また、成長意欲を持っています。
だからこそ、彼らを引き留めるには次の二つが必要になります。
1.未来を見せること ― この会社がどう変わっていくのか。
2.成長の機会を与えること ― 新たな技術の習得、業務の改善、部下を持つ、など。
 
優秀な人材には、特にこれらを与える必要があります。
それらを与えるためには、「会社が成長発展していること」が必要になります。
成長とは質的によくなっていくことを指します。発展とは量が増えているということです。その状態にないと、優秀な彼らの欲求に応えられないのです。
 
改善のプロジェクトを起こす、研修を受けさせる、それで一時は気をそらすことはできるかもしれません。しかし、根本的な「現状維持」の環境は変わっていないのです。いずれにせよ、彼らは会社を去ることになります。

新卒採用が「停滞」を浮き彫りにする


N社は新卒採用をしていました。それ自体は素晴らしいことです。
しかし、それは成長をしない会社にとっては、むしろ離職率を高める要因になります。
 
若手は覚えるのが早ければ、飽きるのも早いのです。そして、「辞める」ものなのです。
意欲的で向上心の高い人ほど、その特性を持つのです。停滞している組織には、早々に見切りをつけてしまいます。
N社では、新卒採用が退職率の高さを助長していたのです。
 
もし「自社は成長しない」という選択をしたのであれば、本来、採るべき人材は、その逆になります。成長意欲がない、これ以上習得するものを求めない、そこそこの給与があれば満足できる。そんな社員ばかりであれば、退職は減り「安定」させることができます。

「飽き」が人間関係を悪くする


また、この「飽き」が人間関係を悪くします。
暇になると、子どもは喧嘩を始めます。やることがないから、余ったエネルギーが他人に向かうのです。
大人も同じです。目標がなく、挑戦もない職場では、人の粗が気になり、愚痴が生まれ、関係が悪化します。
 
逆に、子どもも大人も、何かに夢中になっているときは喧嘩をしません。やるべきことがあり、達成したい目標があると、人は自然と協力し合うのです。
 
賢明なN社長です、最後には決意を口に出されました。
「会社を大きくすることを考えます。自分も実は退屈していたのだと思います。」

組織は生まれた瞬間に、大きくなる宿命を持つ


組織は、生まれた瞬間から成長を『宿命』にします。成長しているから、社員の「もっと成長したい」「もっと給与を」「次の役割(役職)を」に応えられるのです。
 
企業にとって成長とは、選択ではなく必然なのです。止まれば、退化が始まります。
人を雇った時から、現状維持が許されないのです。

まとめ:動く社長のまわりに、人は集まる


短期間で戦力化する仕組みを持ち、
優秀な人材を留める仕組みを整える。
 
そのために、まず会社そのものを大きくしていく決意が必要です。
そして、それを言葉ではなく、行動で示していくことです。
 
その動きが“渦”をつくります。
変化と挑戦の渦に巻き込まれ、社員は育っていきます。
2〜3年で辞める社員もいなくなり、
やがて、その渦に惹かれて、また新たな優秀な人材が集まってくるのです。
 
その渦の中心に立つのは、社長です。
社長が動けば、会社が動き、社員が動く。
組織の成長は、常にその一点から始まるのです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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