No.569:「5年で10億」と言う社長へ:その目標、実は“何も描けていません”

№569:「5年で10億」と言う社長へ:その目標、実は“何も描けていません”

食品企画製造業を営むS社長が相談に来られました。
現在の年商は2億円です。
 
私はいつもの質問をしました。
「社長、どれくらいまで行きたいと考えていますか?」
 
S社長は迷わず答えました。
「5年後に10億に行きたいです。」
 
力強い言葉でした。
私は続けて、もう一つの質問を投げました。
「では、そのための方針や、進め方は何かありますか?」
 
S社長はしばらく黙り、そして静かに言われました。
「……いえ、具体的にはありませんが。」

目標の正しい立て方


目標の立て方には二つあります。
一つは、「現状の延長」、そして、もう一つは「逆算」です。
 
現状の延長
今年の年商が2億円なら来期は2.2億と目標を立てます。
多くの会社が、このように目標を立てます。
 
「今ある課題を解決すれば、それは達成できそうだ」
そう思える範囲で考えるため、発想はどうしても小さくなります。
 
その結果として、その2.2億円を超えることは絶対にありません。
このコラムでお伝えしているように、社長が描いたもの以上になることは無いのです。
社長は“神”ですから。社長が見えていない景色に、会社だけが先に行くことはありません。

社長が描いた 2.2億円を“超えることは絶対にない”


そしてさらに厳しいことを言えば、
その2.2億の目標にさえ、実際には届きません。
現状の延長で置いた目標は、「少しの努力で達成できる」と全員が感じてしまいます。社員もそして社長自身も。そう脳が思ってしまうのです。
 
そのため、根本的に何かを変えることに向かいません。
・仕組みを変えない
・組織を作り直さない
・採用を強化しない
・新しい商品を作らない
 
“努力という意識の強化”で何とかなると思っているから、根本的には何の変化も起こさないのです。
たまたま突発的に案件が増え、売上が2.2億や2.4億のペースになったりします。
すると、現場は混乱し、クレームが増え、すぐに前期と同じ水準に戻ることになります。

「内部を整える一年」は成功しない


よく「今期は内部を整えるための1年にする」という会社があります。しかし、その多くはうまくはいきません。社員はその1年分の経験を積むことになり、その分、落ち着いたように見えます。しかし構造が同じであれば、会社は何も変わっていないのです。
そして、その数年後にその社員たちの退職が起きます(構造が変わっていないのですから)。
 
結論を言えば、数字だけではダメなのです。どんな数字でも、です。
具体的に何を変えるのか、それを決めて、実際にそれを変えることが必要ということです。
 
逆算(未来の数字から考える)
これが真の“目標設定”になります。
「5年後に10億に行きたい」ここから逆算するやり方です。
逆算で考えると、やはりその発想は大きくなります。
 
しかし、ここでも注意が必要です。
「5年後に10億円」とこのように目標を立てる社長は非常に多くいます。しかし、実際には“何も考えていない”ことが多いのです。

多くの社長は「10億」を言うだけで、考えていない


今の年商が2億円だとすると、5年で10億だと毎年138%の伸びが必要となります。
2億 → 2.76億
2.76億 → 3.8億
3.8億 → 5.2億
5.2億 → 7.2億
7.2億 → 約10億
ぜひしっかりこの数字を見てください。
これで「5年で10億」です。
 
実際には、この計算もしていないのです。138%で1年目には2億が2.76億です。
つまり、「5年で10億」と言ってはいるものの、全く“描けていない”のです。
逆算とは、夢を語ることではありません。未来を具体的に描くことです。

管理者や社員に目標を立てさせると「現状の延長」になる理由


社員に目標を立てさせると、基本的に前者の「現状からの延長」となります。
課題が見えやすいから、そして、現場が見える分だけ、そうなります。
 
しかし、これに不満を持つ社長が多くいます。しかし、それは完全に誤りです。
彼らの役割の多くは、「今」であり「日銭」を稼ぐことにあります。未来を描くのは「社長」の役目です。
 
管理者や社員に大きな目標を描いてほしいなら、社長が“大きくて具体的な未来”を見せなければなりません。「10億に行くぞ」だけでは誰も考えられないし、動けないのです。

件数で考えると、未来が一瞬でリアルになる


そのためにも、ぜひこれをやってください。
目標設定は、“件数”で考えるのです。
 
年商 = 単価 × 件数
 
例えば、年商2億円は「100万円 × 200件」です。
ならば2.2億を目標とするならば、220件になります。
 
では年商10億円なら?
単価100万円なら、1,000件になります。
 
ここから思考が拡がることになります。
・1,000件の市場はあるのだろうか
・処理能力は足りるのか、どう準備するのか。
・「3日に1件の納品」が「1日3件」に変わる
・営業数、施工数、在庫、管理者の数は?
“件数”にすると、未来の“現実”が一瞬で見えてきます。
 
その上で、二つの疑問のどちらかに至ることになります。
・自分(自社)は本当にそこへ向かうのか
・この事業では無理だ、と悟る
 
この、どちらでも良いのです。
大事なのは、数字によって未来がクリアになることであり、思考が前進できればよいのです。

10億を目標にするのは、素晴らしい


そして、それを口に出すこと、文字にすることは本当に素晴らしいことです。
小さい目標には小さい発想、大きい目標には大きい発想が伴います。
これは絶対の法則です。
 
しかし、それだけでは足りません。
 
「10億」という言葉を具体的な目標に置き換える必要があります。
何をすれば10億に進むのか、何を得れば10億を超えられるのか。そして、何を捨てるのか。
 
今の延長に年商10億はありません。
 
具体的に描くことです。
そして、そのために動くことです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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