No.570:経営がつらい社長ほど、経営計画書をつくるべき理由

№570:経営がつらい社長ほど、経営計画書をつくるべき理由

不動産業K社長と、サシでの呑みの席です。
「先生、この2年で経営が楽しくなりました。」
当社に相談に来られた2年前、K社長は「経営がつらい」と漏らしていました。
 
私はその言葉を肴に酒を口に含み、お聞きしました。
「何が一番、大きかったですか?」
 
少し考えたあと、K社長は答えました。
「……やっぱり、経営計画書をつくったことですかね。」

経営計画書をつくる目的


経営計画書をつくる目的は、大きく3つあります。
 
①設計図
・どのような事業をやっていくのか。
・どのように変化していくのか。
・どのような組織をつくっていくのか。
経営計画書には、会社がこれから成長・発展していくための「全体の設計図」が書かれています。
 
②依頼書
そして、この設計図を実現するために、管理者や社員に動いてもらうことになります。
その時、経営計画書は依頼書として機能をします。
彼らは、それを読むことで、「何をつくるのか」、「自分はどの役割を担うのか」、「どのように行動すればよいのか」を具体的にイメージできるようになります。
 
③判断の指針
実際に動き始めると、やはり多くの想定外の出来事や問題が起きます。
そのときに必要になるのが、進む先=判断の指針です。
新しい話が来たとき、迷ったとき、意見が割れたとき。立ち返る基準となるのが、経営計画書です。
進む先が明確であれば、一つひとつの出来事に振り回されることなく、冷静に修正し、判断することができます。

経営計画書は「社長のため」にある


組織のためにつくられる経営計画書は、実は、社長自身に対しても大きな効用を発揮します。
 
経営計画書をつくる過程で、社長の中には、確かな変化が起きます。
作成を終えた社長の多くが、こう言われます。
「頭の中が、すっきりしました。」
 
・多くのことを検討することで、その後、判断がぶれなくなる
・ぼんやりしていた考えが言葉になり、整理され、焦りがなくなる
・自分が事業と会社を「創る」という覚悟が生まれる
 
私は、この変化を『社長の覚醒』と呼んでいます。
 
これは、大げさな話ではありません。経営計画書をつくる前と後では、社長の心の在り方が大きく変わってしまうのです。
冒頭のK社長は、まさにこの覚醒を経ていました。

大事なのは「自分でつくること」


経営計画書で社長が変わるかどうかは、次の3つで決まります。
 
1.自分でつくる
経営計画書は、社長自身がつくらなければ意味がありません。
経営企画室やコンサルタントが代わりに「まとめた資料」では、覚醒は起きません。
思っていること、考えていることを、書いては消し、消しては書き直す。その過程で、初めてその変化が起きるのです。
 
その過程で、脳は整理され、心に覚悟が宿るのです。
経営計画書に向かう時間と手間が、“社長をつくる”ということです。
 
2.自分の言葉で書く
他社の経営計画書やコンサルタントから提供されたものを、真似てはいけません。
本当は、見ないほうがいいぐらいです。必ず影響を受けてしまうからです。
 
必要なのは、自分の言葉、そして、自分が選んで使った言葉です。
そこに、普段自分が使わない言葉や、自分の熱量がこもっていない文章が混じると、経営計画書は一気に力を失います。
 
3.正しいつくり
世の中には、間違ったつくりの経営計画書があふれています。それに習ってはいけません。
 
その経営計画書が正しいつくりかどうかは、簡単に判断することができます。
その基準は先にあげたものです。
・設計書になっているか。
・依頼書になっているか。
 
事業をどうしていくのかが具体的に書かれているか、管理者や社員が自分の役割や行動をイメージできるか、です。
その理にかなった正しいつくりの経営計画書だからこそ、社長は「自信」を持てるのです。

覚醒が起きない経営計画書


・人につくらせた(まとめさせた)もの
・人の言葉を真似たもの
・正しいつくりになっていないもの
それでは覚醒は起きないのです。
 
それどころか、社長自身も経営計画書に“しらけること”になります。それは、管理者や社員にも、すぐに伝わることになります。彼らも、同様にしらけ、また社長への信頼も失うことになります。
 
経営計画書づくりで、最もしてはいけないのが「近道」なのです。そこで「楽をしよう」や「効率よくやろう」と考えてはいけません。時間を掛けるのです。

まとめ(提言):正しい経営計画書


経営計画書は、社長自身のためにあるのです。
 
経営とは、本来、孤独な仕事です。
答えのない中で決断し、結果の責任をすべて自分一人で引き受け続ける。
 
だからこそ、必要になります。
・自分でつくる
・自分の言葉で書く
・正しいつくりで仕上げる
 
この3つを満たした経営計画書は、組織を動かすと同時に、その社長の心を安定させます。そして、成長もさせてくれます。
 
もし、経営が「修行」のように感じているなら、それは能力でもやる気の問題でもありません。やり方が間違っている可能性が高いのです。
 
まずは正しい経営計画書をつくって下さい。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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