No.544経営計画書が書けない社長へ──スタートは、頭ごちゃごちゃでOK

№544:経営計画書が書けない社長へ──スタートは、頭ごちゃごちゃでOK

「先生、経営計画書がどうしても書けません。」
K社のコンサルティングは、いよいよ「組織づくり」の段階に入りました。
 
その組織作りに不可欠なのが、経営計画書です。
しかし、その前提として必要なのが「社長の考えを整理すること」です。
 
K社長は、すでに5週間、何度もペンを取り、書いては止まり、書いては消し…を繰り返しています。
 
私は静かにお伝えしました。
「それは、良い兆候ですね。」

経営計画書は「書けない」のが普通です


経営計画書を作ろうとすると、多くの社長が「書けない自分」に不安を抱きます。
・考えがまとまっていない
・こんな状態で書くのは意味がない
・もっと整理できてから始めるべきだ
 
このように、「まず思考を整理してから書こう」として、手が止まってしまうのです。
しかし、その考え方が間違いです。
 
経営計画書は「整理してから書くもの」ではないのです。
 
これは、思考の構造と脳の働きに基づく原理原則です。
「書くから整理される」のです。書いては消し、また書いては組み直す。その繰り返しによって、脳が整っていくのです。
 
この苦しみを乗り越えた社長は必ずこう言われます。
「すごく自分の考えがクリアになりました。」
 
間違っても、「整理されているものを書く」と思わないでください。
その過程で、「何かが生まれる」のです。深く思考するなかで、自分の脳と魂のレベルが、一段、二段と上がっていくのです。

経営計画書作成には「3つの段階」がある


経営計画書は、一気に書き上がるものではありません。次の3つの段階を踏むことで、それが形になっていきます。
 
【第1段階】拡散期:思考をすべて書き出す
まずは、頭の中にあることをすべて書き出します。アイディア、悩み、課題、気づき──すべてを言語化して「外に出す」段階です。
この時、フォーマットやサンプルがあると、たしかに“楽”に感じます。しかし、それに頼りすぎると、自分の思考に枠がつくられ、深い思索に至りません。フォーマットやサンプルに「依存しない」ことです。
 
【第2段階】検討期:書きながら考える
「書きながら考える」ことで、本当の自社の課題や強みが浮かび上がってきます。そして、「自分が何をやりたいのか」も問われることになります。常時、脳は考え続けており、アイディアが振ってきたり、思考が練られ絞られていきます。
 
【第3段階】凝縮期:選び、決定する
やるべきこととやらないことの取捨選択が進み、すべてが固まってきます。理念から事業方針、そして、単年度目標までのすべてに一貫性が備わってきます。この時の充実感は何物にも代えがたいものがあります。まさに「腹が据わる」状態になります。
 
多くの社長が、途中で止まってしまう理由
経営計画書が「書けない」あるいは「過去に断念した」と言う方は、第1段階で諦めたか、第2段階の途中で我慢できなくなったのです。しかし、もう一度チャレンジしてみてください。必ず乗り切れます。
 
上記の三段階を知ることで、経営計画書作成はずいぶん「楽」になります。

書き出しのポイントと注意点


ポイントは、「最初から綺麗な構成で書こうとしないこと」です。「今の課題」「業界の変化」「やってみたいこと」など、そんな断片的な思考を、まずは“メモ”として書き出していくのです。
 
このとき、特に注意すべき点が2つあります。
 
1.経営理念から書き始めない
経営理念を書くと、脳は抽象的な方向に行ってしまいます。「人」や「愛」や。それは大切なものですが、具体的な事業や方針からは遠ざかってしまいます。
組織づくりに必要なのは「事業理念(事業定義)」になります。
経営理念を載せたいのであれば、すべてを書き上げた後に加えるのがよいでしょう。
 
2.社員にどう説明しようか、と考えない
書いている途中で「どう社員に伝えるか」「彼らはどう受け止めるか」を考え出すと、筆が止まってしまいます。経営ですから、社員やその関係部署にこの段階では知らせないほうが良いこともあるのです。
まずは、「社長用」のものを完成させましょう。その後に、「社員用」に加工します。

混乱こそ、本気の証である


経営計画書作成には、必ず「苦しみ」や「混乱」が伴います。
それは、実に良いことです。社長として本気で「自社の未来」を考えている証拠なのです。それが簡単なはずがないのです。簡単で済むはずがないのです。
 
ここで「苦しんだからこそ」、この先の事業方針に自信が持てるのです。その経営計画書が「本当の経営計画書」になるのです。そして「実際に運営される」のです。
 
もし、そこに「苦しみ」がなく、簡単に作れるものであれば、その後「この道でいいのだろうか」と方針に迷うことになります。また、その経営計画書が大切に扱われることもなく、実際に運営もされないのです。
 
安易に「テンプレに頼ること」、「他人に任せること」は、自らの「創造力」と「実行力」そして「社長の役目」を放棄するに等しい行為なのです。

最後に:自社の未来のために書き始めよう


頭がごちゃごちゃしていても、まずは机に向かってみてください。書き出すことから、すべてが始まります。会社の変革も、そこから動き出します。
その先には、自分の考えがクリアになった状態が待っています。
そして、その先にこそ、「自社の未来」と「社員とその家族の幸せ」があるのです。

 
ぜひ挑戦してください。私はあなたを応援しています。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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